湯浅誠
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湯浅誠

社会活動家・法政大学教授。1969年、東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。著書に「ヒーローを待っていても世界は変わらない」「『なんとかする』子どもの貧困」など多数。ラジオでレギュラーコメンテーターも務める。

実社会で担えない支配的役割をゲームで代用

公開日:

「男子劣化社会」フィリップ・ジンバルドー、ニキータ・クーロン著 高月園子訳/晶文社 2000円+税

 中学生のころ、初めて「ヤングジャンプ」を読んでちょっとエッチな描写に見入り、高校生で初めて近所のレンタルビデオ屋でAVを借りた。店員が女性で、どうにも気まずかったが、それでも好奇心には勝てず、何度か利用した。それでも、そのAVには顔射もフェラチオシーンもなかった。だから初体験のとき、どちらがなくても混乱も不満もなかった。素直に感激した。

 今の若者、特に男子は、当時の私が想像することもできなかった過激な行為を、セックスどころかキスの経験すらないときから浴びるように見ている。乱交もアナルセックスも見飽きた彼らは、目の前の女性がポルノ女優のように振る舞わないことに戸惑いを覚えるという……。

 しかしこれは、個人における性の成熟ルートがちょっと変わりましたという話では済まない、と元米国心理学会会長の著者らは言う。コトは社会における男子のあり方に関わっている、と。

 この数十年をかけて、女性は従来の家事・育児の中心的担い手という役割に加えて、社会により積極的に進出することを学んだ。特に有能でなくても男が支配的立場に立てた時代は終わりつつある。ところが、両親や世の中が男子に期待する役割はあまり変わっていない。実社会で担えなくなった支配的役割を果たせるポルノやゲームに男子がハマり込んでいく構図が、現代社会にはある。あの世界でなら、万能感を味わえる。

 ただし、世の中でうまくいかないからポルノやゲームに逃避、とは限らないのだと著者らは言う。ポルノやゲームにはそれ自体に依存性があり、気晴らしのつもりがそれでは済まなくなり、ハマることで日常生活に支障を来すというベクトルもある。そしてこの悪循環には、生理的、社会的に男のほうが陥りやすい。

 車社会にデビューするためには何十時間もの教習が義務づけられているのに、性を含む男女のコミュニケーションについてはほとんど何も教えず、結果的にファンタジーにすぎないポルノが性の教科書となる状況が放置されている。それはカーチェイス映画だけを見て運転を始めるようなものだ。

 さて、ポルノもゲームも、断つことで脳のシナプスは別の結合を強める(「回復」する)らしい。電車や喫茶店でのぞき見るかぎり、おじさんたちも相当ゲームにハマっているし、ポルノ動画のヘビーユーザーで、新味がないと立たないという機能不全を抱えている人もいるだろう。「今どきの男子の話」と片づけず、我が身を顧みる機会としても読んでみたい。

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