首に腫れや違和感があれば内分泌科の受診を
「甲状腺の病気の治し方」伊藤公一監修
ほとんどの場合で命に関わることのない甲状腺の疾患。しかし、治療中は独特の症状を理解されずに苦しむ患者も少なくない。本書では、甲状腺の役割から疾患ごとの症状、治療法などをイラストと共に分かりやすく解説している。
首の前側にある甲状腺の役割は、臓器や細胞の働きを活発にするホルモンを分泌し、全身の代謝を促すこと。代表的な疾患としては、甲状腺機能が活発になり過ぎて起こるバセドー病と、機能低下で起こる橋本病が挙げられる。前者では、食べ過ぎるのにどんどん痩せる、脈が速くなる、暑がりになり大量の汗をかくなどの症状が表れる。後者では、食べていないのに太り、脈が遅くなり、非常に寒がりになるなどの症状が特徴だ。
橋本病は男性の20~30倍と圧倒的に女性が多いが、バセドー病は2割が男性患者である。橋本病の治療では、1日1回、甲状腺ホルモンを補う薬を服用するのが唯一の治療法だ。バセドー病では、甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬物治療や、甲状腺を取り除く手術がある。放射性ヨウ素入りのカプセルをのみ、甲状腺の細胞を壊して減少させることで機能を正常に戻す「アイソトープ療法」という治療法もある。
甲状腺がんも女性が男性の3倍多いが、大半が穏やかな性質のがんであり、手術とアイソトープ療法の併用で治療が可能だ。甲状腺疾患は進行が遅いという特徴もあるが、早期の治療に越したことはない。首に腫れや違和感があれば、放置せずに内分泌科を受診してみよう。
(講談社 1300円+税)