行き詰まった40代以降の会社員も読んでほしい

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「フリーランス、40歳の壁 自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?」竹熊健太郎著/ダイヤモンド社/1400円+税

 1960年生まれの編集家・フリーライターの実体験と、同氏の知り合いの自由業者のサバイバル術を描いたもの。登場する人物は320万部超のベストセラー「磯野家の謎」シリーズなどを手掛けた杉森昌武氏ら。筆者の竹熊健太郎氏といえば、90年代に「ビッグコミックスピリッツ」で連載された「サルでも描けるまんが教室」(相原コージと共著・通称「サルまん」)の著者としても知られる。

“自由業者は発注相手が年下だらけになると仕事が頼みづらくなり、そのまま仕事を失ってしまう”といったことを描くが、本書はサラリーマンにも通用する内容となっている。それが本書タイトルに込められた「40歳の壁」なのだ。「50歳の壁はさらに高い」という章もあり、ここではこんな記述がある。

〈40歳から43歳は私にとってどん底期でした。多摩美の非常勤講師は2003年に始まりましたが、非常勤は担当時間当たりの時給制です。時給としては決して悪くないのですが、週1回では生活できず、アルバイトもはじめました。ライターの仕事はほとんどなく、時間は十分にあったので、ブログをやってみる気になりました〉

 ここから同氏はネットを積極的に活用するようになり、現在は無料Web漫画雑誌「電脳マヴォ」編集長かつ運営会社の代表社員だ。新たなる才能の発掘を行っているが、「フリーランスとして生きてきた、私のライフワークです」とまで述べている。

 もともと文章を書いたり漫画論を大学で教えていた同氏が病気や収入減などの紆余曲折も経て、50代半ばにして起業し、「ライフワーク」をついに見つけた。同氏にとっては、ブログ、ツイッター、そして「電脳マヴォ」とネットの活用が転換点となったが、これこそ現在の会社員生活に行き詰まりを覚えている40代以降の参考になるかもしれない。

 私は1997年に広告大手・博報堂に入ったが、その頃「社内暇人」と言えそうな40代以降をけっこう見ていた。若手の残業が激しい中、出世レースから陥落したおじさんが図書室で新聞を読んでいたり、PCゲームの「ソリティア」を熱心にやっているのだ。

 自分もこんなおじさんになる未来が見えたため4年で辞めたのだが、ああしたおじさんは全国各地にいるだろう。それまでの知見を基にネットで情報発信するなどし、早期退職で上乗せされた退職金をもらって新たなキャリアを形成すれば? なんて思った。そんな発奮もさせてくれる書である。 ★★★(選者・中川淳一郎)

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