「知ってるつもり無知の科学」スティーブン・スローマンほか著、土方奈美訳
自転車の略図にペダルやチェーンを描き入れてもらうと、ほぼ半分の人が正しく描けないという。自分は知っているつもりでも実は正しく理解していないことが多い。認知科学者のトーマス・ランドアーが人間の記憶量を算出したら、0・5ギガバイトだったという。
寒いときに早く室温を上げようと、温度自動調節機の目盛りを一気に上げる人が多いが、それは無駄な努力である。例えば芝刈り機が芝を集める様子は見ることができるが、食料の遺伝子組み換えがどのように行われるかは見ることができない。人が間違った考えを抱くのは、その欠落を自分の経験で補おうとするからである。
「知ってるつもり」の正体を解明する一冊。(早川書房 1900円+税)