「小屋を燃す」南木佳士著

公開日: 更新日:

 東京郊外の高校に通っていたころ、期末テストを終えて帰りの電車で寝過ごし、都心まで来てしまった。駅に貼ってあったポスターに引かれて、デパートで開催されていた印象派展を見た。ルノワールやモネはわからなかったが、シスレーの河畔の風景に目を奪われた。額縁の中に飛び込めば異界に抜けられそうな軽快な青色の空がそこにあった。それ以来、何かあるとあの空を思い出し、他人の言説や自分が見ているものが他の次元に通じているか否かを判断する尺度にしてきた。(「畔を歩く」)

 精神を病んで、自宅安静を命じられた医師が、生死のあわいを見つめる連作短編集。 (文藝春秋 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち

  4. 4

    YouTuber「はらぺこツインズ」は"即入院"に"激変"のギャル曽根…大食いタレントの健康被害と需要

  5. 5

    クマと遭遇しない安全な紅葉スポットはどこにある? 人気の観光イベントも続々中止

  1. 6

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲

  4. 9

    「渡鬼」降板、病魔と闘った山岡久乃

  5. 10

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が