「小屋を燃す」南木佳士著

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 東京郊外の高校に通っていたころ、期末テストを終えて帰りの電車で寝過ごし、都心まで来てしまった。駅に貼ってあったポスターに引かれて、デパートで開催されていた印象派展を見た。ルノワールやモネはわからなかったが、シスレーの河畔の風景に目を奪われた。額縁の中に飛び込めば異界に抜けられそうな軽快な青色の空がそこにあった。それ以来、何かあるとあの空を思い出し、他人の言説や自分が見ているものが他の次元に通じているか否かを判断する尺度にしてきた。(「畔を歩く」)

 精神を病んで、自宅安静を命じられた医師が、生死のあわいを見つめる連作短編集。 (文藝春秋 1500円+税)

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