「君は玉音放送を聞いたか」秋山久著

公開日: 更新日:

 日本でラジオ放送が始まった1925年以降、満州事変、日中戦争、太平洋戦争と相次いで起こった戦争を、ラジオはどのように伝えたのか。本書は、その歴史のスタート時から国策放送への道を突き進み、ついには自ら積極的に戦争協力への道を歩んでいったラジオ放送の姿を追ったものだ。

 玉音放送を巡って起こされたクーデター未遂事件、葬送行進曲になった「海ゆかば」などの誕生秘話、政府による検閲からGHQによる検閲へと姿を変えた終戦後などを紹介しながら、戦争に果たしたラジオの役割の大きさを浮き彫りにしていく。

 著者は、PKO活動におけるメディアの取材自粛依頼や、南スーダンにおける陸上自衛隊の破棄された日報問題など、言論統制の兆候が見え始めていることを憂慮し、「戦争が起これば最初の犠牲者は真実だ」という米国上院議員の言葉に触発されて本書をまとめたという。

 ジャーナリズムの在り方について、考えさせられる一冊になってる。

 (旬報社 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑