「死神刑事」大倉崇裕著

公開日: 更新日:

「警視庁の方から来ました」といって、名刺を差し出す。そこには「警部補 儀藤堅忍」とだけあり、所属部署、連絡先など一切書かれていない。冤罪による無罪確定と同時に事件の再捜査を始め、「逃げ得は許さない」との信念で真犯人を追及していく。警察組織の傷をえぐり出す厄介者で、その相棒に選ばれた者は組織から疎まれ、出世の道も閉ざされる。そこからついたあだ名が「死神」。

 大塚東署刑事課の大邊誠は1年前の資産家殺人事件で甥の逮捕に関わったが、その甥に無罪判決が下った。そこへ儀藤が現れ相棒に任命される。最初はうさんくさく思っていた大邊だが、捜査を進めるうちに儀藤の類いまれな洞察力に感服するようになる。(「死神の目」)

 交通課勤務の三好若菜は、夫をひき逃げしたとして逮捕された妻の再捜査に当たるが、そこには予想外の真実が待ち受けていた。(「死神の手」)

 冴えない外貌に鋭い推理力。不気味さの底に潜む犯罪に対する強い憤り。常識破りで破天荒な名刑事が新風を巻き起こす。

 (幻冬舎 1700円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  3. 3

    高市内閣の閣僚にスキャンダル連鎖の予兆…支持率絶好調ロケットスタートも不穏な空気

  4. 4

    葵わかなが卒業した日本女子体育大付属二階堂高校の凄さ 3人も“朝ドラヒロイン”を輩出

  5. 5

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    隠し子の養育費をケチって訴えられたドミニカ産の大物種馬

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    高市早苗「飲みィのやりィのやりまくり…」 自伝でブチまけていた“肉食”の衝撃!

  5. 10

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑