「フィフティ・ピープル」チョン・セラン著 斎藤真理子訳

公開日: 更新日:

 スジョンの母は医師に、娘の結婚式が9月にあるので、それまでには外出できないといけないと訴えた。医師に式を前倒しにした方がいいと勧められ、病院を出るやいなや式場に電話した。

「私ね、ガンが転移しましてね、もうすぐ死ぬの」

 母が主導権を握ってから何もかも制御不能になり、スジョンは頭痛がした。写真スタジオでは最多撮影カット数を獲得、式場に飾る花だけでもひと財産使い果たしそうだ。当日、盛装の限りを尽くした母は、古典舞踊を踊るように一回転してみせた。さらららん。あの衣擦れの音とともに思い出になるのなら悪くないじゃない。(「ソン・スジョン」)

 病人、けが人、医師など病院で出会った50人の人生が交錯する連作短編小説集。

(亜紀書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由