「とむらい自動車」倉知淳著
大西は前日、学生時代の友人・八木沢が事故に遭った現場に立つ。そこは街道から入った脇道で、ひっきりなしに猛スピードで車が通り過ぎ、事故が起きるのも無理がないと思わせる場所だった。現場には誰が手向けたのか菊の花が置かれていた。
物思いにふけっていると、一台のタクシーが止まり、大西の前でドアを開ける。声をかけてきた運転手によると、鈴木という客に呼ばれてきたという。人違いだと知ったタクシーは首をかしげながら去っていくが、その後も次々と迎車のランプをつけたタクシーが鈴木に呼ばれたとやってきて、大西を乗せようとする。(表題作)
八木沢や大西の先輩である猫丸が日常のささやかな謎を鮮やかに解決していく連作短編集。
(東京創元社 860円+税)