世界史を学ぶ最新教養本特集

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「『戦争と平和』の世界史」茂木誠著

 戦争をタブー視する戦後の歴史教育は、サッカーの試合に負けたチームが敗因の分析を行わずに「二度とサッカーはしない。ボールを持たない」と誓ったのと同然だと著者は指摘する。しかし、現実世界では、北朝鮮の核・ミサイル問題や中韓との領土問題など、「試合」は続いており、望むと望まざるとにかかわらず、巻き込まれる可能性が高まっている。

 本書は、石器時代から第2次大戦まで、世界の戦争の歴史を振り返り、人類が、いかにして戦争を抑止するシステムを構築してきたかを考察。江戸時代に長く平和が続いた一方で、なぜ国際法を学んだ明治日本が、昭和には軍国主義の国となり、敗戦後に平和憲法の国に転換したのか。迫りくる東アジアの危機に巻き込まれないために、どうすればよいのかを歴史に学ぶ。

(TAC出版 1600円+税)

「教養としての世界史の学び方」山下範久編著

 現代を理解する枠組みとして、世界史を適切に参照することができる力=世界史のリテラシーを養うためのテキスト。

 近代の歴史学においては、世界の発展段階を古代・中世・近代という3つの構造的に異なる時代に区分してとらえる見方が定着。社会科学の各学問は、西欧諸社会が19世紀に経験した近代化を踏まえ、理論化・体系化が進められてきた。ゆえに、日本などの非西欧諸社会の近代化の経験は、常に西欧の歴史を尺度に評価され続けてきた。

 しかし、多極化する世界を理解するには、西欧という限られた視野の中で概念化されてきた「近代」を時間的・空間的にも、より大きな視野の歴史の中に開いて、多元的にとらえなおす必要があると説く。欧米にリードされてきた世界史のリテラシーを、非欧米社会の視点からとらえなおす試み。

(東洋経済新報社 1800円+税)

「超約ヨーロッパの歴史」ジョン・ハースト著 福井憲彦日本語版監修 倉嶋雅人訳

 長大複雑なヨーロッパ文明史を大胆、そして明解に語りつくす歴史講義。

 ヨーロッパ文明は、その文明をそれ以外の世界に強要してきた唯一の文明という点で極めて独特。その発端においてその文明を構成したのは、「古代ギリシャ・ローマの文化」「ユダヤ教の分家であるキリスト教」「ローマ帝国に侵入したゲルマン戦士の文化」の3要素だと説く。

 しかし、この3つの要素の混合物は極めてもろく、1400年代に入ると混合物の構成要素は次第に分離。その最初のきっかけはルネサンスだった。ルネサンスによってヨーロッパ社会は脱宗教化=世俗化への長い道のりを歩み始めたのだ。以後、現代のEUに至るまで、その特徴を論じるとともに、それがどのような可能性や問題点を人類社会に投げかけてきたかを論じる。

(東京書籍 1800円+税)

「東大名誉教授がおしえるやばい世界史」本村凌二監修 和田ラヂオ/イラスト亀/マンガ滝乃みわこ/執筆

 歴史に名を残す偉人たちも、視点を変えると「やばい」面がある。本書は、そんな偉人たちの「すごい」功績と「やばい」面の双方を紹介しながら、世界史の流れを解説した面白テキスト。

 メソポタミアの統一に成功したバビロンの王ハンムラビは、揉め事を解決し、強い者が弱い者をいじめることがないようにと、世界最古の法律「ハンムラビ法典」を作ったことで知られる。しかし、実はこの法典、やばいほど子供に対しては容赦なく「子が父を殴ったら手を切る」「養子が養親に暴言を吐いたら舌を切る」など、年齢や身分で扱いが変わる法律だったそうだ。以後、ストレスがたまると便器で足を洗い、会議中にその足を机の上にのせていたというスティーブ・ジョブズまで。45人の偉人たちで世界史をおさらい。

(ダイヤモンド社 1000円+税)

「とてつもない失敗の世界史」トム・フィリップス著 禰宜田亜希訳

 人類がこれまでに繰り返してきた破滅的な失敗の歴史を振り返る異色本。

 20世紀前半、干ばつと大規模な砂嵐で大被害を生み出したアメリカの開拓政策など、「やみくもに環境を変化したツケ」をはじめ、昔ながらの集団思考の実例であるとされるケネディ政権下で行われ、大失敗に終わった「キューバ侵攻」など、「人類の戦争好きは下手の横好き」的失敗の数々。

 そして、穀物を食べるからとの理由で、スズメを駆除動物に指定して1億羽も殺戮したため、イナゴを大発生させて飢饉を招いてしまった中国の毛沢東の政策は、「気やすく生物を移動させたためにしっぺ返しを食らった失敗事例」だという。さらに、何世紀か後に人類は、自らが作り出したごみで、人類専用の宇宙の鳥かごに閉じ込められるだろうと未来の失敗まで予言する。

(河出書房新社 2300円+税)

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