「証言 治安維持法」NHK「ETV特集」取材班著 荻野富士夫監修
後に「希代の悪法」と呼ばれた治安維持法は、1925年の制定から終戦まで運用され、検挙数は植民地を含め10万人以上に及ぶ。当時、非合法だった共産党を取り締まる目的で制定された法律だったが、次第に対象は一般市民にまで拡大し、多くの無実の人が過酷な取り調べを受けた。
雇用の不安定さを解消するため、非正規の印刷工仲間と親睦会を結成して検挙された103歳の男性、義父が共産党員だったために14歳で連行され1カ月間も勾留され、拷問・取り調べを受けた105歳の女性など。当事者や遺族の証言からその運用実態を検証し、法治国家にあっても法そのものが国民の自由を奪う事態が起きることを警告するルポルタージュ。
(NHK出版 900円+税)