「夏の坂道」村木嵐著

公開日: 更新日:

 大日本帝国憲法公布の年に香川県で生まれた南原繁は、18歳のとき上京し、日本中の秀才が集まるといわれる一高に進学した。しかし、新渡戸稲造や内村鑑三といった尊敬する師に恵まれ、学問とキリスト教に目を開かれた南原に待ち受けていたのは、戦争の時代だった。

 軍国主義が台頭し、治安維持法には目的遂行罪が加えられ、特別高等警察が全府県に配置されるようになる。東京帝大の法学部教授となった南原は、貴重な本が発禁処分を受け、何人もの教授たちが不敬罪で告発され、学問や言論の自由が失われていくのを目撃する。

 軍部や政争に好き勝手に悪用される法を作ったのは、ほかならぬ東大法科で学んだ人間ではないのかと自問するなか、法学部が政治と対峙せざるを得ないことを実感するが、ついに太平洋戦争が始まってしまった。終戦を願う南原は、学内の仲間と秘密裏に終戦工作を始めるのだが……。

 2010年「マルガリータ」で第17回松本清張賞を受賞し、作家デビューした著者の最新作。戦後最初の東大総長として、敗戦後の日本のあるべき姿を説いた南原繁の生涯を描いている。

 (潮出版社 1900円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    渋野日向子の今季米ツアー獲得賞金「約6933万円」の衝撃…23試合でトップ10入りたった1回

  2. 2

    マエケンは「田中将大を反面教師に」…巨人とヤクルトを蹴って楽天入りの深層

  3. 3

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です

  4. 4

    陰謀論もここまで? 美智子上皇后様をめぐりXで怪しい主張相次ぐ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  2. 7

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  3. 8

    Snow Manの強みは抜群のスタイルと、それでも“高みを目指す”チャレンジ精神

  4. 9

    小室眞子さん最新写真に「オーラがない」と驚き広がる…「皇族に見えない」と指摘するファンの残念

  5. 10

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か