世界のダークサイド

公開日: 更新日:

「サイバー アンダー グラウンド」吉野次郎著

「ダークサイドに落ちた」はスター・ウォーズだけじゃない。ネットから人間関係までいまやこの世界はダークサイドだらけだ。

 最近の若手社員。わからないことがあっても上司や先輩にたずねず、すぐにネット検索ですませようとするという。しかし、ネットの世界は闇だらけ。アマゾンや食べログのレビューでもやらせの偽レビューの横行は周知の事実だ。本書はそんなネットの闇をめぐる日経ビジネス記者の取材記である。

 学校でのいじめから引きこもりになり、独学でハッキングを習得。ネットで知ったハッカーの「先輩」に「指導」され、ウイルスをばらまき、企業のホームページを乗っ取って恐喝を繰り返すようになる。やがて逮捕。こういう例が後を絶たないばかりか、踏み込んだ警察相手に「京都府警のみなさん、さすがです」などとドラマのようなセリフを吐く中学生ハッカーまでいるという。

 中国では深圳の近くに偽レビューの拠点があり、ネットを通じて日本語の偽レビューを担当する日本人を募集しているという。

 口コミ代行業も盛んで、やらせレビュー1件の代行業者の値段は米国が1050円、深圳が750円なのに対して日本は525円だそうだ。円安のせいだが、こんなところにも没落ニッポンの影が見えるようだ。

(日経BP 1600円+税)

「ダークサイド オブ MBA コンセプト」グロービス著

 MBA(経営学修士号)といえばアメリカでは出世のパスポート。しかしその一方で自分をエリートと思い込んで現場でトラブルになったり、同僚や部下の鼻つまみになる者も少なくない。その理由は、ビジネススクールで教わる発想やスキル、ツールが現場のビジネスとかみ合わないこともあることがわかっていないから。

 総合コンサルティング会社の現役コンサルタントによる本書は、そのずれを「ダークサイド」と呼び、はまりやすい落とし穴を教える。

 特に「バリューチェーン」や「ケイパビリティー」「ポジショニング」「ブランド」など横文字を多用したがるのは、とかくコトバ倒れになりがち。そのあたりをうまく指摘してくれる。

(東洋経済新報社 1500円+税)

「ドナルド・トランプ 世界最強のダークサイドスキル」蟹瀬誠一著

 見え見えの大嘘を平然とつきながらも米上院の弾劾決議をまんまと逃れたトランプ。そんなトランプをテレビジャーナリストの著者は「ならず者」と呼び、その居直りの術に注目する。

「堂々と嘘をつき続けろ」「自分は誰よりも偉いと思え」「法律なんてくそ食らえ」「勝つためなら何でもあり」「俺はいつも正しい」と、章題を並べただけで厚顔無恥のオンパレードだが、著者はこの流儀が何より「シンゾー」には抜群の効き目であることを見逃さない。

「シンゾーだから日米関係はいいんだ」と歯の浮くようなお世辞で気を許したとたんに一発かます。

 首脳会談の第一声「真珠湾攻撃を忘れないぞ」でシンゾーをビビらせたのが何よりの実例なのだ。

(プレジデント社 1500円+税)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 2

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  3. 3

    Snow Man目黒蓮と佐久間大介が学んだ城西国際大メディア学部 タレントもセカンドキャリアを考える時代に

  4. 4

    ポンコツ自民のシンボル! お騒がせ女性議員3人衆が“炎上爆弾”連発…「貧すれば鈍す」の末期ぶりが露呈

  5. 5

    高市新政権“激ヤバ議員”登用のワケ…閣僚起用報道の片山さつき氏&松島みどり氏は疑惑で大炎上の過去

  1. 6

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  2. 7

    田村亮さんが高知で釣り上げた80センチ台の幻の魚「アカメ」赤く光る目に睨まれ体が震えた

  3. 8

    自維連立が秒読みで「橋下徹大臣」爆誕説が急浮上…維新は閣内協力でも深刻人材難

  4. 9

    ラウールが通う“試験ナシ”でも超ハイレベルな早稲田大の人間科学部eスクールとは?

  5. 10

    「連合」が自民との連立は認めず…国民民主党・玉木代表に残された「次の一手」