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「ハビタブルな宇宙」井田茂著

 NASAのケプラー宇宙望遠鏡の観測データが、未知の太陽系外惑星が多数存在する可能性を示唆。地球外生命体へのロマンが盛り上がっている。



「ハビタブル」とは「すむことができる」の意味。つまり地球以外にも生命体の生息する惑星があるのではないか、という話だ。

 具体的には水があり、海のある太陽系以外の系外惑星。水の温度は高すぎても低すぎてもいけない。ちょうどいい温度で液体が存在できるのが「ハビタブルゾーン」にあるという。

 ただし地球のように外見が青いとは限らず、そこにすむ生命体も人間のような姿をしているとは限らない。

 そうすると「意識」や「知性」の意味も変わってくることになるだろう。

 地球物理学を専門とする東工大教授の著者は、難解な専門用語や説明を避けながら、SFチックになりがちな「地球外生物」についての正しい知識を授けてくれる。面白いのは「地球外」の話から始まった本書がしだいに地震や火山、遺伝、進化論、気候変動、ゲノム解析などへ進んで地球やヒトのなりたちにまで分け入ること。そのあともう一度、「天空と私が交錯する『ハビタブル天体』」へと戻ってくるという構成が巧みだ。

(春秋社 1800円+税)

「地球外生物学」倉谷滋著

 理化学研究所で進化発生学を専門とする著者は、SFの小説や映画の大ファンでもあるらしい。本書は専門の立場から地球外生物を描いた映画を論じたユニークな本。

 第1章は「ギーガー種」と著者が名づけたものの「進化と逸脱」を論じた映画「エイリアン」論。第2章はなんとバルタン星人やガラモン、ナメゴンなど「ウルトラ」シリーズの怪獣を専門の立場から論じるといった具合だ。たとえば「ウルトラ」シリーズにはバルタン星人のように名前も外見も明らかに地球外生命体である怪獣もいれば、ケムール人のように、この地球上の別次元から来たのかもしれない(つまり「地球外」でない)怪獣もいる。

 随所にあふれるマニアならではの短評や一言も楽しい。

(工作舎 2000円+税)

「第二の地球が見つかる日」渡部潤一著

 国際天文学連合で「準惑星」という新しい分類を設け、冥王星をそこに位置づけた業績を持つ天文学者。そんな著者によると、現代の天文学者は天体望遠鏡をのぞくことはなく、カメラで記録された画像データがコンピューターに送信され、望遠鏡はリモコンで室内から動かすだけだという。

 だが、そんな時代になっても天文のロマンは依然として輝かしい。天動説から地動説への展開、ペガスス座51番星の発見、ドップラー効果による新しい観測法の普及など、天文マニアなら少年時代に心をときめかせたエピソードがここでも語られる。

 著者自身とおぼしい真一少年の成長記が折々に登場するのも親しみやすい。

(朝日新聞出版 810円+税)

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