教育の現実と理想

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「ルポ教育困難校」朝比奈なを著

 低成長を避けることのできない21世紀のニッポン。その教育の現実と理想は?



 公立高校の地歴・公民の教師として20年間の教歴を持ち、教育格差問題などに深く関わってきた著者。自身が進学校で学び、進学校でも教えてきた立場だけに「底辺校」といわれる場が抱える問題の複雑さと根の深さをよく知る。

 偏差値40台前半の学校では義務教育の半分を理解できていなくとも入学できるのが実情。私立学校になると公表されている偏差値自体が当てにならないケースも多いようだ。本書のいいところは教育困難校の生徒と教師の双方に目を配り、それぞれの立場から同じ学校がどう見えているのか、どのような苦労を抱えているかに具体的に触れている点。

 教員という仕事は「ブラック職業」といわれがちだが、それはなぜなのか。教員同士は同じ職場で苦労をともにしているはずだが、実は宴会などを欠席すると「何を言われるかわからないから」無理にでも出席するという。ブラック企業にありがちな話だが、教員のストレスが「使えない」仲間をスケープゴートにさせるわけだ。

 想定される主な読者は現役教師だろうが、実は教育こそ社会の問題。そして我が子や我が孫の直面する現実。そこを踏まえると本書の意味は倍加する。

 (朝日新聞出版 790円+税)

「フィンランドの教育はなぜ世界一なのか」岩竹美加子著

 読解力で日本の子供の国際レベルは15位。1位から4位までを中国、シンガポール、マカオ、香港で独占した中華勢と比べると雲泥の差だ。一方、受験はなく受験勉強もなく、出身校によるエリート主義もないフィンランドは同じ国際比較の多くの項目で1位。しかも国民の幸福度も1位だ。この差は何なのか。

 本書はフィンランドと日本で子育てを経験した著者が語るフィンランドの教育と社会。出産からして手ぶらで病院に行けばいいフィンランド。小学生も重いランドセルなど持たず、小中高では「道徳」と「倫理」を分けて教わる。高校では生徒各自が時間割を自分で作り、大学では国が低額の学習ローンなどの経済支援を行う。日米のように、社会人になってもローン返済で苦しむことがないのだ。

 (新潮社 780円+税)

「SDGs時代の教育」北村友人、佐藤真久、佐藤学編著

「持続的な開発目標」を意味する略語「SDGs」は流行語大賞になってもおかしくないほどだが、いざ教育の場でというと難しくなる。環境保護は喫緊の課題とはいえ、文明化された生活を手放すこともできない。そこで登場したのが「持続可能な開発」(SD)という発想。そのための教育が「ESD」だ。本書はこの分野に関連する専門研究者総勢25人による共同作業の産物。これだけの人数になると焦点がぼやけがちなものだが、本書は幼児教育から高等教育まで、教職課程の学生向けから社会人教育までといったように、章ごとに内容を明確化し、使いやすくなっている。

 マイノリティーや特別な配慮を要する子供らへのインクルーシブ(包摂的)教育の実践方法なども具体的に載っている。

 (学文社 3000円+税)

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