「日本の『原風景』を読む」原剛著

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 米沢平野の山沿いにある高畠町(山形県)は、土地の人々が「まほろばの里」と呼ぶ美しい町である。6月、田も人も生気に満ちる。満々と水をたたえた田、寺を分散させ、徐々に傾斜度を高めていく地形は、どこか懐かしさを感じる風景でもある。

 陰影に富む、山ひだの深い奥羽山脈につながるこの高畠町の里山の景観は、縄文・弥生時代に遡る農耕の記憶を呼び覚ます、まさに原風景なのだ――。

 人の心を育て、鍛え、挫折したときにはそこへ戻って立ち直ることができる、風土性豊かな自己形成の場、「原風景」を全国各地に訪ねたルポルタージュ。山岳に宿る神仏を感じる「山」、文化としての「野鳥」、原風景を貫流する「川」、「東日本大震災の現場」など6つのテーマから日本文化の基層、日本人の環境意識と自然観を映す場所を写真と共に紹介する。

 東日本大震災で失った風景になぜ人は心を痛めるのか。その土地が人と自然が織りなす歴史によって、ある考えや感じ方が濃厚に培われる「場所性」をはらんでいたから、との指摘が腑(ふ)に落ちる。

(藤原書店 2700円+税)

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