「怖い患者」久坂部羊著

公開日: 更新日:

 区役所で働く愛子は、職場のトイレで自分に対する陰口を聞いてしまって以来、恐ろしいほど嫌な気分に襲われ、冷や汗や震えを伴う発作が起こるようになった。心療内科でもらった診断名は「パニック障害」。自分の発作はパニック障害のように生やさしいものでなく、この世の終わりかと思うような絶望感を伴うものだと説明したが、わかってもらえず次々と病院を替えて受診する羽目に。なかなか納得のいく診療をしてくれる医師が見つからなかったが、あるとき親身になってくれる小川医師に出会う。おかげで症状は改善し仕事にも復帰できそうかと思った直後、先生の言動に不安を感じてその私生活を綿密に調べ始める……。(「天罰あげる」)

 現役の医師として、医療に関する現代的な問題を取り上げた作品で人気のある著者の最新短編集。本作には、冤罪をでっち上げて医師を廃業に追い込む患者、他人の不幸に快感を覚える医師、疑心暗鬼に陥る妊婦、復讐を果たすデイサービスの老人たちなどを主人公にした、医療の現場で起こり得るぞっとさせられる話を描いた5編を収録。リアリティーがあり過ぎて背筋が凍る。

(集英社 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    NHK「昭和16年夏の敗戦」は見ごたえあり 今年は戦争特別番組が盛りだくさん

  3. 3

    永野芽郁が“濡れ場あり”韓流ドラマで「セクシー派女優転身、世界デビュー」の仰天情報

  4. 4

    有本香さんは「ロボット」 どんな話題でも時間通りに話をまとめてキッチリ終わらせる

  5. 5

    海星・陣内優翔は長崎県初の“完全男”だが…スカウトが「上位獲得」を渋るワケ

  1. 6

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  2. 7

    綾瀬はるか3年ぶり主演ドラマ「ひとりでしにたい」“不発”で迎えた曲がり角…女優として今後どうする?

  3. 8

    中山美穂「香典トラブル」で図らずも露呈した「妹・忍」をめぐる“芸能界のドンの圧力”

  4. 9

    長崎を熱狂させた海星・酒井圭一さんが当時を語る…プロ引退後はスカウトとして大谷翔平を担当

  5. 10

    安藤サクラ「柄本佑が初めて交際した人」に驚きの声…“遊び人の父”奥田瑛二を持つ娘の苦悩