台湾人の独立意識が高まった「ひまわり運動」

公開日: 更新日:

「私たちの青春、台湾」

 抗議デモがすぐ「暴動」よばわりされる昨今。思い出されるのが6年前、台湾を席巻した「太陽花學連」こと「ひまわり学生運動」だ。

 親中派・馬英九総統率いる国民党の強硬姿勢に「密室政治反対」を唱える学生が300人余で立法院(国会)の議場を占拠。しかし彼らは抜群の統率力と「ひまわり」をシンボルにする上手なメディア対応で「暴徒」にはならなかった。むしろ広範な市民が呼応し、「台湾人」の独立意識が国政レベルにまで高まってゆくのである。

 この「ひまわり運動」の若者たちを追ったのが今週末封切りのドキュメンタリー映画「私たちの青春、台湾」。監督の傅楡(フー・ユー)はマレーシアとインドネシアの中国系の父母のあいだに生まれ、11年ごろ、のちにひまわり運動のリーダー格となる陳為廷(チェン・ウェイティン)と中国から台湾に留学した蔡博芸(ツァイ・ボーイー)と友人になる。

 映画は彼らの政治活動を追うだけでなく、友人として笑い、走り、叫び、悩む姿に寄り添う。博芸は活動をつづったブログで知られるものの故国の父の叱責に涙し、為廷は過去に検挙された経歴が暴露されて窮地に立つ。

「ひまわり」から半年後に起きた香港の「雨傘運動」は幸福な結末とはいえないが、一見「勝利」を得た「ひまわり」にもさまざまな犠牲と涙があったことがわかる。社会運動の記録という以上に一種の「ダイアリー」なのである。

 篠原清昭著「台湾における教育の民主化」(ジダイ社 4800円+税)は民主化運動が一朝一夕の出来事ではなく、長年にわたる台湾の「教育における民主主義」と「教育による民主主義」の関わりから生まれたことを考察する。討議も熟議も、青年の自己形成を支える民主的な思考の習慣がなければ開花しない。近頃特にそう思うのである。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「転職者は急増」なのに「人材派遣会社は倒産」が増えているワケ

  2. 2

    俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」

  3. 3

    驚きの品揃え! ダイソーでほぼすべて揃う「防災グッズ」の実力は?

  4. 4

    優勝の祝儀で5000万円も タニマチに頼る“ごっつぁん体質”

  5. 5

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  1. 6

    長嶋一茂はこんなにも身だしなみを意識している? VIOはもちろんアンチエイジングも

  2. 7

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  3. 8

    大関・大の里3度目優勝で期待される「大豊」時代の幕開け…八角理事長も横綱昇進に期待隠さず

  4. 9

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  5. 10

    国民民主党はやっぱり与党補完勢力だった! 企業・団体献金「存続」で自民党に塩を送る罪深さ