「駒音高く」佐川光晴著

公開日: 更新日:

 67歳のチカは千駄ケ谷の将棋会館で清掃員として働いている。無口なチカは仕事中に誰かと言葉を交わすことはないが、4年前に1度だけ少年と話したことがある。ほとんど口をつけていない弁当をゴミ箱に捨てにきた少年は、泣き腫らした顔をしていた。奨励会入りを目指すその少年は、おそらく対局で負けたのだろう。チカは思わず励ましの言葉を送ったのだ。その後、一度も少年を見かけることはなかった。

 春、一人旅が趣味のチカは、大阪に向かう。思いついて大阪の将棋会館に足を踏みいれたチカは、あの時の少年・弓彦と再会する。(「大阪のわたし」)

 他に、初めて駒を手にしてから半年で頭角を現した小学6年の野崎など、将棋の世界に生きるさまざまな人々を描く連作集。

(実業之日本社 700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    名球会入り条件「200勝投手」は絶滅危機…巨人・田中将大でもプロ19年で四苦八苦

  2. 2

    永野芽郁に貼られた「悪女」のレッテル…共演者キラー超えて、今後は“共演NG”続出不可避

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    07年日本S、落合監督とオレが完全試合継続中の山井を八回で降板させた本当の理由(上)

  5. 5

    巨人キャベッジが“舐めプ”から一転…阿部監督ブチギレで襟を正した本当の理由

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    巨人・田中将大が好投しても勝てないワケ…“天敵”がズバリ指摘「全然悪くない。ただ…」

  3. 8

    高市早苗氏が必死のイメチェン!「裏金議員隠し」と「ほんわかメーク」で打倒進次郎氏にメラメラ

  4. 9

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  5. 10

    三角関係報道で蘇った坂口健太郎の"超マメ男"ぶり 永野芽郁を虜…高畑充希の誕生日に手渡した大きな花束