「リズム・マム・キル」北原真理著
                         パワーあふれる物語だ。
 話は簡単。やばい写真を撮られた半グレの帝王が、殺し屋を雇ってその写真を回収させる話である。ガールズバーのVIPルームで未成年とよからぬことをしている現場を撮られたというのだが、なぜそれだけのことで殺し屋まで雇うのか、その違和感がずっとついてまわる。もちろんそれにはわけがあるのだが、そうだとしても目新しい話ではない。
 パワーはどこから生まれるのか。それは構成が秀逸で、キャラ造形がすぐれているからだ。まず、構成だが、冒頭いきなり、誕生日の翌朝、少女るかが居間に入るとナイフを持った殺し屋がいて「初めまして、ヤタです」と挨拶してくるのだ。こんな普通の挨拶をする殺し屋、見たことない。第一、殺し屋って挨拶するものなのか。
 つまり、何が起きているのか読者には知らされないまま物語がスタートするのである。話はあとからついてくる。半グレのチーム名「ナイヤガラ」の由来がずいぶんあとにさりげなく出てくるのもニクい。そうか、随所に出てくるユーモラスな箇所もいい。
 めちゃめちゃな話だなあと思いながらも、途中でやめることはできずに一気読みするのは、帝王ジンとその片腕晴斗(弁護士でもある)をはじめ、個性豊かな登場人物の造形がいいからだろう。1人ずつ紹介したいところだが、スペースの都合で断念。躍動感あふれるアクション小説だ。
(光文社 1980円)

 
                             
                                     
                                        




















 
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
         
         
         
         
         
         
         
         
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                 
                                