著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「真・慶安太平記」真保裕一著

公開日: 更新日:

 慶安太平記といえば、由比正雪や丸橋忠弥らが幕府転覆を図った慶安の変(決行前に発覚したので未遂に終わっている)を描いた実録もので、のちに歌舞伎や講談の演目にもなったので広く知られている。そこに「真」と付くからには新しい解釈で描いたということだろう。

 読むと驚く。本当に「真」だ。というのは、由比正雪や丸橋忠弥がほとんど登場しないのである。由比正雪は1カ所だけ登場するが、登場はその1回のみ。まさに異色の慶安太平記だ。

 では、由比正雪や丸橋忠弥を出さずに、何を描くのか。主役は、老中の松平伊豆守信綱である。幕府を運営するにあたって、家光に仕える信綱がいかに知恵を張りめぐらせたのか、その政治手腕を中心に描いていく。

 そもそも慶安の変は、江戸時代初期、まだ徳川幕府の体制が固まる前、その威厳を示すために多くの大名を改易したことに端を発している。大名が改易されれば、仕えていた武士たちも雇用が途絶えて浪人となる。つまり、ちまたに浪人が激増するのだ。再雇用の道は厳しく、浪人たちの不満がたまっていく。由比正雪や丸橋忠弥のもとに浪人たちが集まったのにはそういう理由がある。

 それを幕府側から描いたのが本書だ。これがとても興味深い。あっと驚く新解釈まで、一気読みである。「作家生活30年記念書き下ろし」と帯にある。

 (講談社 1925円)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・藤川監督に「裸の王様」の懸念 選手&スタッフを驚愕させた「コーチいびり」

  2. 2

    JFAは森保一氏の“囲い込み”に必死 W杯後の「次の日本代表監督」のウワサが聞こえない謎解き

  3. 3

    TBS「ラヴィット!」の“テコ入れ”に不評の嵐! グダグダぶりを楽しむ独自性損失で視聴者離れ加速危機

  4. 4

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  5. 5

    元横綱照ノ富士「暴行事件」の一因に“大嫌いな白鵬” 2人の壮絶因縁に注目集まる

  1. 6

    小松菜奈&見上愛「区別がつかない説」についに終止符!2人の違いは鼻ピアスだった

  2. 7

    高市首相「私の悲願」やはり出まかせ…消費税減税「断念」に向け経済界・財務省・自民党・マスコミが包囲網

  3. 8

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  4. 9

    《タニマチの同伴女性の太ももを触ったバカ》を2発殴打…元横綱照ノ富士に大甘処分のウラ側

  5. 10

    米国とイランが2週間の停戦合意も日本は存在感ゼロ…お粗末すぎた高市外交を識者「完全失敗」とバッサリ