「小鳥を愛した容疑者」大倉崇裕著

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「小鳥を愛した容疑者」大倉崇裕著

 東日本大震災では、人命とともに多くのペットの命も失われた。災害に限らず、何らかの原因で飼い主が帰ることができずに置き去りにされるペットも少なくない。本書は、犯罪に関わった人が残したペットの保護を専門とする警察の特殊部署を舞台にしたユニークな警察小説だ。

【あらすじ】警視庁捜査1課のベテラン刑事、須藤友三警部補は、犯人を追跡中に頭部を銃撃され重傷を負う。退院後、内勤を打診されるが、須藤はあくまでも捜査1課への復帰を希望し、拒否する。結果、警視庁総務部総務課課長代理心得という役職を与えられる。表向きは存在しない特殊な部署で正式名称は総務部総務課動植物管理係、要は窓際部署だ。

 いい加減暇を持て余していたところに1課時代の同僚、石松警部補が訪ねてくる。殺人事件の容疑者の男が入院中で、彼が飼っていた十姉妹の保護をしろというのだ。須藤は仕方なく、同課のもう一人の専従課員、薄圭子巡査と一緒に容疑者のマンションへ向かう。

 薄は北海道の大学獣医学部をトップで卒業、獣医師・潜水・乗馬の免許を有し、生物学の知識も専門家並みという才女。常に制服を着用し、童顔もあってコスプレと間違えられることもしばしば。それでも現場に入るなり、彼女は十姉妹に関する知識をフル稼働して、ある事実を解明していく。

 その後もヘビ、カメ、フクロウといったペットを相手に彼女の並外れた知識で捜査1課が見落としていた謎を解明していく--。

【読みどころ】各ペットについてのうんちく。まさに目からうろこのエピソードが満載だが、それを無理なく物語に落とし込む著者の手腕にも感心させられる。渡部篤郎、橋本環奈の主演でテレビドラマ化もされている。 〈石〉

(講談社 817円)

【連載】文庫で読む 警察小説

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