「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」加藤実秋著

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「メゾン・ド・ポリス 退職刑事のシェアハウス」加藤実秋著

 どんなに敏腕をふるった刑事でも、公務員であるからには定年を迎えれば退職しなければならない。ところが現在の60歳はまだまだ働き盛り。そんな退職刑事がシェアハウスに集い、現役女性刑事を手助けして事件を解決に導くというユニークな設定だ。

【あらすじ】牧野ひよりは警視庁柳町北署刑事課の巡査。努力を重ねてようやく憧れの刑事課に配属されたが、仕事といえばお茶くみとコピー取りと書類の作成ばかり。雑用係の扱いにうんざりしていたところに殺人事件が発生。

 被害者は天ぷら店の店主で、自宅へ戻る際に何者かに拉致され、頭からガソリンを浴びせられた上、ライターで火をつけられ焼き殺された。4年前、同様の手口で被害者が焼死する様子をネットで生配信した「デスダンス事件」の模倣犯によるものとの見方が強い。しかし、それ以上進展はなく手詰まりになっていたところ、ひよりは課長の新木から「デスダンス事件」を担当した夏目惣一郎という元刑事に話を聴いてくるように命じられる。

 夏目がいたのは、退職刑事たちが暮らすシェアハウスだった。オーナーは元警視庁のお偉方の伊達、管理人は元中野東署総務部の高平、そのほか、元科警研の藤堂、ひよりと同じ柳町北署の元刑事の迫田という面々だ。皆定年退職者だが、夏目はある事件を理由に定年前に辞職した50代。この癖の強いおじさんたちを相手にひよりは翻弄されつつも、彼らの豊富な経験に目を見張らされる……。

【読みどころ】最後には夏目が刑事を辞めた理由となる事件とひよりの父の失踪という2つが結びついていくという思わぬ展開が待っている。高畑充希(ひより)と西島秀俊(夏目)らの出演で、テレビドラマ化もされた異色の警察小説。 〈石〉

(KADOKAWA 748円)

【連載】文庫で読む 警察小説

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