芸術家の視点から探る アートを巡る本特集

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「こじらせ恋愛美術館」ナカムラクニオ著

 師走に入り慌ただしい日々の休息に、アート探索してみてはいかが。今回は、芸術家視点から探る美術の見方、芸術家の恋愛事情など4つをテーマとしたアートを巡る本をご紹介。難しいことはさておき、何かが自分の感性にヒットするかもしれない。

  ◇  ◇  ◇

「こじらせ恋愛美術館」ナカムラクニオ著

 芸術の起爆剤として見逃せないのが芸術家の恋愛体験だ。本書は、「こじらせた恋愛」によって作品を生み出した芸術家をピックアップ。彼らの人生を解き明かしたイラスト満載の大人の教科書だ。たとえば、パステルカラーの女性像を描くマリー・ローランサン。彼女は、画商で詩人の男、ピカソの親友の美術評論家との恋に破れた後にドイツ人貴族と結婚したが、戦争が勃発したことでドイツ国籍が災いしてフランスを追われ、スペインに亡命。そこでもスパイ容疑をかけられ、夫はアルコール依存症に。そんなとき頼りになった長年の友人と同性愛に目覚め創作意欲を取り戻していった。

 ほかにも女性側の浮気や事故死で5回結婚した藤田嗣治、妻の恋人を自分の恋人にしたアルベルト・ジャコメッティらも登場。人間くさい芸術家の姿が愛おしい。

(ホーム社 1980円)

「死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅」山上やすお著

「死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅」山上やすお著

 博物館学芸員の資格を保有し、海外旅行の添乗員として今まで80カ国、約50の美術館を訪れてきた著者が厳選した、海外美術館11館と日本美術館2館を巡る紙上美術旅行プラン。添乗員の著者が、美術素人の編集担当者に旅のレクチャーをする会話形式で、初日のパリのルーヴル美術館でのダ・ヴィンチの「モナ・リザ」から、最終日の島根県・足立美術館での横山大観の「紅葉」まで、死ぬまでに一度は見ておきたい有名美術を紹介していく。

 名画の意外なエピソードが披露されているのもミソで、たとえばノルウェーのムンク美術館が所蔵するムンクの「叫び」の章では、「叫び」という作品は実は4枚存在し、制作時期も色合いも画材も異なることが明かされている。実際の旅行の参考としても、妄想の脳内旅行のお供としてもたっぷり楽しめる。

(ダイヤモンド社 2090円)

「美術道」パピヨン本田著

「美術道」パピヨン本田著

 便器をひっくり返して「泉」だと言い張るマルセル・デュシャン、絵の具をぶちまけて抽象画と言い出すジャクソン・ポロック、水玉模様を描きまくる草間彌生ら、一見意味不明な現代アートの世界。難しくてわからないとお嘆きなら、作品からだけでなく、作家という視点から見ていくとその意図が見えてくるらしい。本書では、頭で考えて鑑賞するコンセプチュアルアート道、難解さから離れて大衆と日常に開かれたポップアート道、西洋とは別の文脈を模索した日本の前衛美術道、戦争や貧困や自然保護など社会的メッセージとの結びつきを強めたソーシャル・アート道の4つの美術道のアーティスト23人を紹介。登場順に作家を見ていくと、どんな時代も価値観をひっくり返すために作家が世代交代を繰り返している様子が見えてくる。

(KADOKAWA 1650円)

「黒い絵」原田マハ著

「黒い絵」原田マハ著

 主人公は、学校でいじめられ、屈辱から「海の底」と名付けた部屋の押し入れに逃げ込んで淫靡な遊びをするようになった女子学生の真央。ある日、小学校のときに引っ越しで連絡がとれなくなっていた一番仲の良かった友人・流花に再会した。近くの街に戻ってきたと知り、また2人で遊ぶ約束を交わしたのだが、かつて子ども同士の戯れに一緒に押し入れに入ってキスをした経験があったことを思い出す。遊びに来た流花は、真央を誘って押し入れに入りたいと言い出すのだが…。(「深海魚」)

 アートをテーマにした小説で定評のある著者が初挑戦した、禁断のノワール小説短編集。上記作のほか、「楽園の破片」「指」「キアーラ」「オフィーリア」「向日葵奇譚」の計6編収録。美術の知識を下敷きにした、艶めかしく、毒のある表現が光る。

(講談社 1870円)

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