「Jamaican Vybz」加瀬息吹著

公開日: 更新日:

「Jamaican Vybz」加瀬息吹著

 母親の仕事の関係で幼い頃から海外ミュージシャン、特にジャマイカのレゲエミュージシャンとの親交が深かった著者は、10歳になるまで自分をジャマイカ人だと信じていたという。

 子どもの頃から幾度もジャマイカを訪れ、17歳のときには家を借りて一時住んでいたこともあるそうだ。

 本書は、その17歳だった2015年から23年まで、第二の故郷ともいえるジャマイカを訪れるたびに撮影してきた写真を編んだ作品集。

 ページを開くと、ドレッドヘアの男性が挨拶するかのように窓から手を出している写真が目に飛び込んでくる。ショッキングピンクの壁と青い窓枠が何とも鮮やかだ。

 さらにページが進むと、信号待ちなのか止まった車の中でブルーのボトルで水分補給をする女性、車のハンドルにはピンクのカバーがかかっている。

 ジャマイカといえばレゲエの伝説的ミュージシャン、ボブ・マーリーの出身国であり、レゲエのシンボルのひとつラスタカラー(赤・黄・緑・黒)が街中のいたるところに用いられている。

 しかし、ラスタカラーだけに収まらず、人々の洋服から家の壁まで、カリブの島独特の鮮やかな色使いで街中が満たされ、それだけで心が躍ってきそうだ。

 著者は、人々が思い浮かべる鮮やかな海やブルーマウンテンなどジャマイカの自然や風土には目もくれず、ここで暮らす人々の日常に溶け込み、レンズを向ける。

 映画のワンシーンのように頬を寄せ合うカップルや、ヒゲまでドレッドで鮮やかなイエローのシャツを着た初老の男性(表紙)など、満面の笑みがまぶしい。

 この男性はトラブル続きの毎日なのに、いつも笑顔を絶やさない。不思議に思って「どうしていつも笑っていられるの?」とたずねると、「苦しいからさ。笑うしかないだろう? 笑っていないとgood vybzを感じられないだろ」(vybz=感覚、気分、ノリ)という言葉が返ってきたという。

 確かに、写真に写る人々の日常からは経済的な豊かさは感じられないが、それ以上の自由や生活を楽しんでいる様子はうかがえる。

 そうした人々のスナップのほかにも、ジャマイカ人のおしゃれな人々が愛用するイギリスブランドの靴クラークスや、王冠やバイク、高級車のBMWなどをかたどった故人の人生や個性が反映されたユニークなお墓などの写真も収録。そして、昨年の旅の最終日にタクシーに乗り合わせた人々の縁でたどりついた首都キングストンの老舗レコード店「ロッカーズレコード」での出会いなど、さまざまなエピソードを交えながら写真を紹介。

 さらに宗教的使用の目的では合法化されているマリフアナを吸いハイになった人々や、この国の未来を担う澄んだ目をした子どもたちのスナップなど。

 作品の中から通奏低音のようにレゲエのビートが響き渡り、読者の心に遠くカリブ海に浮かぶジャマイカの風がさわやかに吹き抜ける。

(東京キララ社 3300円)

【連載】GRAPHIC

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  2. 2

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  3. 3

    嶋基宏は一時期ノイローゼ状態になっていた...心ここにあらずで、魂が抜けた状態に

  4. 4

    伊藤健太郎とキンプリ永瀬廉で明暗クッキリ…「熱愛報道」出口夏希の足を引っ張りかねない“イメージ格差”

  5. 5

    なぜ「愛子天皇」ではダメなのか? 美智子さまが心情を吐露する出版物を準備中…と政界で話題

  1. 6

    嵐が去る前に思い出す…あの頃の「松本潤」と「大野智」

  2. 7

    視聴率の取れない枠にハマった和久田麻由子アナの不運 与えられているのは「誰でもできる役割」のみ

  3. 8

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  4. 9

    居酒屋倒産が過去最多ペース 客離れの背景にある「飲み放題5000円」の壁

  5. 10

    巨人“育成の星”のアクシデントに阿部監督は顔面硬直、原辰徳氏は絶句…桑田真澄氏の懸念が現実に