「遺言」森永卓郎、岸博幸著

公開日: 更新日:

「遺言」森永卓郎、岸博幸著

 共に霞が関での宮仕えを経て経済評論家や学者として活躍、さらに60歳を過ぎてがんを患い余命宣告を受けた2人が、「財務省」「防衛政策」「小泉構造改革」など8つのテーマで本音対談。

 今の社会は企業が栄え、個人がやせ細る状態が続いているが、それは民間の経営陣はデフレだった30年間、サラリーマンをしていた人が多く、インフレになったからといって大胆な賃上げというマインドがないからだ、と森永氏が分析。

 その流れをつくった責任者が竹中平蔵氏では? と尋ねると岸氏は「彼だけではない」。竹中氏が構造改革を推し進めたのは確かだが、政府が長期的な政策より、経済対策や補正予算を乱発するなど短期的な政策ばかりを繰り返した影響が大きいと答える。

 また経済成長が著しかった1985年までは国益のためにアメリカと戦っていたが、突然、完全な対米従属路線に変わった。日航機墜落事件と41日後のプラザ合意が関係していると睨む森永氏に対し、当時、経産省にいた岸氏は真相は分からないが、肌感としてアメリカが本気で日本をつぶしにきていたこと、外務省がアメリカの顔色をうかがった卑屈な態度になっていたと記憶をたどる。

 省庁の権力争いや「原発」に対する、小泉、安倍、岸田政権のスタンスまで知られざる現実を語り尽くす。 (宝島社 1540円)


【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々