「安全に狂う方法」赤坂真理著

公開日: 更新日:

「安全に狂う方法」赤坂真理著

 酒やギャンブルなど一定の行為にハマる状態を一般に依存症と呼ぶ。症状さえ消えれば回復だと思われがちだが、その要因となった緊張感や不安などの生きにくさが解消されない限り、本人を苦しめ続けることも少なくない。著者は、毎日欠かせなかった飲酒や薬の過剰摂取に苦しみ、ついには愛する人を殺すか自分が死ぬかだと思うほどの感情に襲われて、セラピストのもとに駆け込んだ。本書は、著者自身の心のとらわれ体験と、そこからの解放の軌跡を赤裸々に描いた書だ。

 著者は「わかっているのにやめられない」状態を、何かに「依存」するかしないかではなく、離れることのできない「アディクション」(固着・執着)として捉えた。対象から自分を引き離す転機となったのは、セラピストの「あなたには、安全に狂う必要が、あります」という言葉だ。その後、ダイナミック瞑想、石牟礼道子の「苦海浄土」などとの出合いを通じて、生きにくさを安全に別なものに転換する手段を発見する。

 固着した行為は、生きる上で感じた痛みを緩和するための「セルフ緩和ケア」であるという指摘にハッとさせられる。 (医学書院 2200円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々