「三億円事件」 なぜここまで日本人を引きつけるのか
なぜ、三億円事件はここまで日本人を引きつけるのか? 歴史作家の加来耕三氏は「〈パーフェクト〉〈勝ち戦〉〈小が大を制する〉という、日本人が弱い要素が3つも詰まっている。日本人が好きな歴史的なエピソードや物語を思い浮かべれば、一目瞭然です」と、こう続ける。
「『忠臣蔵』は、47人の赤穂浪士が1人も討ち死にせず、吉良上野介の首を取り、主君の敵を取った。『鼠小僧』は、本当は大名屋敷を専門に荒らしたコソ泥ですが、汚職大名や悪徳商人から盗んだ金銭を貧しい者に配った“義賊”として伝えられています」
三億円事件も、死者を出さず、4人の銀行員を相手に1人のニセ警官が立ち回り、150点以上の遺留品があるにもかかわらず、未解決のまま現在に至っている。
「しかも被害に遭った日本信託銀行は保険に入っていたので、1円も損をしていない。犯罪は犯罪ですが、小が大をパーフェクトに制した勝ち戦。そこに引かれるのでしょうね」(加来氏)
つい3年前に立川市の警備会社で起きた6億円強奪事件は、国内犯罪史上最高額なのに、すっかり忘れられつつある。逮捕された実行犯は暴力団関係者。“3つの要素”がひとつもないことと無関係ではあるまい。