著者のコラム一覧
細田昌志ノンフィクション作家

1971年、岡山市生まれ、鳥取市育ち。CS放送「サムライTV」キャスターから放送作家としてラジオ、テレビの制作に携わり、ノンフィクション作家に。7月に「沢村忠に真空を飛ばせた男 昭和のプロモーター・野口修評伝」(新潮社)が、第43回講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。

児玉誉士夫の要請で上海で興行会社起業 淡谷のり子ら招聘

公開日: 更新日:

 中国最大の都市、上海。総人口は2419万6800人。首都北京を抜いて中国国内第2位(1位は重慶)。世界第3位となる。

 野口進一家が移り住んだ1938年の上海は、英米日の共同租界とフランス租界、中国人居住区の3つに区分され、約10万人の外国人が住んでいた。共同租界の北側の虹口地区には約3万人の日本人が住んでおり「日本租界」と呼ぶ向きもあった。

■ディック・ミネらが日本軍を定期的に慰問

 野口家は、家長の進を社長に「野口興行部」なる興行会社を起業した。ディック・ミネ、淡谷のり子、ベティ稲田ら日本人歌手をはじめ、2代目広沢虎造ら浪花節の大スター、大衆演劇並びに剣劇一座などを常時日本から上海に招聘し、現地に駐留する日本軍に向けた慰問興行を定期的に催していた。これこそが児玉誉士夫の要請だったのだ。

 駐留する日本軍幹部ともつながっていた児玉はかねて慰問興行の開催を依頼されており、誰に任せるか頭を悩ませていた。一口に興行と言うが、容易なものではない。古株の大陸浪人から中国の秘密結社まで跋扈する当時の租界は、児玉誉士夫といえどもおいそれと手出しできない“魔界”だったのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」