著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

10%が発症する脳転移 ベストの治療順序は定位放射→TKI

公開日: 更新日:

 そう書くと、深刻に思われるでしょうが、EGFR変異に伴う異常をブロックする薬剤(EGFR―TKI)が相次いで登場。今では、イレッサ、タルセバ、ジオトリフ、タグリッソの4つが保険で使用できます。これらによって5年の延命も可能になるのです。

 脳転移治療は従来、脳全体に放射線を照射する全脳照射が主流。そうすると、正常組織へのダメージも少なくなく、認知機能の低下が問題で、今では勧められていません。この点も改善が見られます。

 それが、腫瘍にピンポイントで放射線を照射する定位放射線治療です。これなら、正常組織へのダメージはほとんどありません。認知機能の低下を食い止めることができます。

 そうすると、一つの疑問が生じます。EGFR―TKIと定位放射線はどちらを先に行うのが効果的か。海外の研究では、全脳照射を含めて、「全脳+TKI」「定位放射線+TKI」「TKI+どちらかの放射線」の3つに分けて、治療効果を調べた研究がありますが、最も延命効果が高かったのが、「定位放射線+TKI」です。

 ところが、日本で放射線治療が行われる割合は減っていて、3割ほど。新薬に注目が集まっていることもあり、最初に新薬の治療を提案されるかもしれませんが、ベストはまず定位放射線治療を受けてから、TKIをプラスすることです。皆さん、ぜひ覚えておいてください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?