著者のコラム一覧
吉田潮ライター、イラストレーター

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

<2>ぼんやりすることが増えた父から「文化」がなくなった

公開日: 更新日:

 メールを打てなくなってから1年後の2014年。父の行動がおかしくなってきた。

 母いわく「食事を出した途端にパソコンの電源をつけたり、他のことをやり始めるからムカつく」。わざと嫌がらせをしているのか、ボケてしまったのか分からない行動が増えたというのだ。一緒に暮らし、掃除、洗濯、炊事すべてを世話する人間からすれば、怒るのも当然のこと。

 そもそも父は家事を一切手伝わない人だった。そして人付き合いが下手で、友達もほぼいない。非社交的な人間の余生に趣味は必須だが、その趣味の写真もパソコンの使い方も分からなくなった。暇つぶしといえば娘たちに電話することくらいしかなかったのだろう。こちらが忙しい時に限って頻繁に電話してくるのだが、用はない。会話も続かない。姉と「いよいよボケ到来!」と話した記憶がある。

「本や新聞を読みたい」「外に出掛けたい」「おいしいものを食べたい」などの意欲は減退し、ぼんやりすることが増えた。父から「文化」がなくなったという感覚。

 実はこの時、私はエンディングノートを家族全員に配っていた。それぞれ記しておくようにと渡したが、父は書かなかった。というか、書けなかった。意味が分からなかったようだ。エンディングノートは心身とも健康なうちに渡さなければ無意味だと知る。時すでに遅し。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  2. 2

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  3. 3

    阿部巨人が今オフFA補強で狙うは…“複数年蹴った”中日・柳裕也と、あのオンカジ選手

  4. 4

    さや氏の過去と素顔が次々と…音楽家の夫、同志の女優、参政党シンボルの“裏の顔”

  5. 5

    ドジャース大谷翔平「絶対的な発言力」でMLB球宴どころかオリンピックまで変える勢い

  1. 6

    参政党のあきれるデタラメのゴマカシ連発…本名公表のさや氏も改憲草案ではアウトだった

  2. 7

    参政党「参院選14議席」の衝撃…無関心、自民、れいわから流れた“740万票”のカラクリ

  3. 8

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  4. 9

    参政党・神谷宗幣代表「日本人ファースト」どこへ? “小麦忌避”のはずが政治資金でイタリア料理三昧

  5. 10

    ドジャースに激震!大谷翔平の“尻拭い役”まさかの離脱…救援陣の大穴はどれだけ打っても埋まらず