寝ている自分が真上に…幽体離脱は脳の病気かもしれない
「自分が寝ている姿を真上から見た」──。俗に言う幽体離脱は脳科学では体外離脱体験と呼ばれる。一部の脳損傷患者に見られると言われているがなぜなのか。情報通信研究機構・脳情報通信融合研究センターの羽倉信宏氏が言う。
「体外離脱体験は右半球の側頭頭頂接合部が関与していると言われています。自分を中心に据えた視点の形成、自己と他者の分離などの働きがあるといわれますが、明確にはわかっていません。ただ、視覚情報と体性感覚情報を統合する機能があるとされるため、そこが障害されると、自分の見ている場所と自分の体の位置感覚とのずれが生じ、体外離脱体験が起きると言われているのです」
側頭頭頂接合部はほかに身体のバランスを伝える前庭系の入力を処理する働きもある。そのためバランス感覚のずれによっておこるという考えもある。平衡感覚の元になる情報は、耳の中にあって頭部の位置と体の傾きを感知する前庭嚢と回転加速度を感知する半規管が受け取る。それらの情報が脳に伝えられ、全身の傾きや位置などを知覚する。体外離脱経験はこのシステムの異常によって起こるという。
「脳卒中など脳の循環器系の疾患で側頭頭頂接合部が障害され体外離脱体験が表れる場合があるほか、てんかんの手術でこの部分に電気刺激を与えると生じることが知られています」(羽倉氏)
何度も幽体離脱を経験する人は脳に病気があるのかもしれない。覚えておこう。