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河野道宏東京医科大学脳神経外科 主任教授

東京医科大学病院脳神経外科主任教授。聴神経腫瘍・小脳橋角部腫瘍・頭蓋底髄膜腫手術のエキスパート。

誤診の要因 聴神経腫瘍の半数以上に突発型難聴や耳鳴りが

公開日: 更新日:

 聴神経腫瘍は、聴力が低下してしまう前に手術を受けるのが最も理想的な展開だと考えています。

 手術は極めて高度な技術を要求される治療です。患者さんへの負荷が少ない治療法といえば、放射線療法になるでしょう。

 しかし、放射線を照射すれば腫瘍は小さくなる可能性は高いものの、聴神経に神経変性が起こり、聴力を失っていくこともよく知られた現象です。

 一方、手術であれば、聴力をその日のうちに喪失する可能性もあるものの、うまく腫瘍を切り取ることができれば、聴力を温存することができます。聴力が残るのと残らないのとでは、運命が大きく変わると思いませんか?

 これまでの連載で触れたように、聴神経腫瘍の症状は、耳鳴りやめまい、難聴です。突発性難聴の症状と非常に似通っており、医師によっては、ほとんど検査を行わずに突発性難聴という診断をしてしまうかもしれません。

 耳鼻咽喉科の学会に発表しようと私が取ったデータでは、聴神経腫瘍の50%以上の人が突発型の難聴や耳鳴りを発症しており、突発性難聴と診断されかねない状況でした。逆に突発型の難聴の1~3%が聴神経腫瘍であるとの報告もあります。この数がくせもので、このまれな聴神経腫瘍を探し出すために全員にMRIを行うのか? これは医療経済的な観点からして、すすめられることではありません。

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