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坂本昌也国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

脂質異常症の薬は筋肉を溶かす? どれくらい警戒すべきか

公開日: 更新日:

 糖尿病の主な治療目的は、動脈硬化の進行を抑えること。その手段として、血糖値をコントロールする必要があります。さらに、動脈硬化に関係している脂質異常症や高血圧の治療も必要不可欠になります。

 この脂質異常症ですが、患者さんの中には「薬を飲みたくない」と主張する方がいます。脂質異常症の薬には「スタチン系製剤(HMG―CoA還元酵素阻害薬)」「フィブラート系製剤」「その他」があり、スタチン系製剤とフィブラート系製剤が処方薬の9割を占めています。

 スタチン系製剤は肝臓や小腸でコレステロールの生合成を阻害してコレステロールの値を下げる薬で、フィブラート系製剤は中性脂肪の合成を抑制する薬です。LDLコレステロールが高い人にはスタチン系製剤が、中性脂肪が高い人にはフィブラート系製剤が、処方されます。どの薬にも副作用があるものの、脂質異常症の薬には副作用の印象が強いようです。重篤なものでは、スタチン系製剤では肝機能障害や血小板減少、末梢神経障害などがあります。フィブラート系製剤では、アナフィラキシー様症状が挙げられます。さらに、スタチン系製剤、フィブラート系製剤のどちらの薬にも共通する副作用として、横紋筋融解症があります。患者さんには、この副作用を気にされる方が多いです。

 横紋筋融解症とは、筋肉が変性・壊死を起こして壊れた筋肉の細胞が血液中に流出し、筋肉中のタンパク質が尿とともに排泄される病態です。放置すると、タンパク質が腎臓で詰まって腎不全となり、死に至ることもあります。

 症状としては、「手足・肩・腰・その他の筋肉が痛む」「手足がしびれる」「手足に力が入らない」「こわばる」「全身がだるい」「尿の色が赤褐色になる」など。米国の調査では、スタチン系製剤の服用者のうち、筋肉痛は2~7%で生じ、横紋筋融解症が疑われるときに見られるクレアチンキナーゼ上昇は0・1~1・0%で認められています。命に関わる重篤な筋障害は0・08%程度となっています。

■薬を飲まずに悪玉コレステロールを下げる方法

 私たちは、スタチン系製剤やフィブラート系製剤を患者さんに処方する場合は、副作用の可能性を重要視して、筋肉痛などの注意すべき症状を患者さんに説明します。

 もし、なんらかの症状が認められれば、まずは薬の服用を中止してもらい、血液検査などを行います。また私の場合、患者さんによっては、処方した最初のうちは1日置きに服用してもらったり、次の外来受診日の1週間前から飲んでもらうなどしています。

 それほど慎重に処方しているので、スタチン系製剤やフィブラート系製剤で命に関わるほどの横紋筋融解症を起こすということは、「ほぼない」と言っても過言ではないほど、ごくまれなのです。むしろ、横紋筋融解症などの副作用を心配して、LDLコレステロールや中性脂肪が高いのに、薬を飲まない方がデメリットが大きい。

 動脈硬化が進行すれば、脳卒中心筋梗塞のリスクが大きくなります。治療が遅れれば死に至る病気ですし、命が助かったとしても深刻な後遺症を抱えることもあります。1度脳卒中や心筋梗塞を起こせば、2度目、3度目を起こすリスクも大きくなります。

 不要であれば、医師も薬を勧めません。なぜスタチン系製剤やフィブラート系製剤が必要なのかを理解し、正しく服用してもらいたいと思います。

 中性脂肪はともかく、LDLコレステロールは運動や食生活改善をしても数値が下がりにくい。高い状態が続けば、動脈硬化が進行してしまいます。その前に、薬を服用することをお勧めします。

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