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奥田研爾横浜市立大学名誉教授

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

なぜ国産の新型コロナワクチンの開発は遅れているのか?

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 研究者の数も306人(2018年)で、職員全体で1万5000人規模の米疾病対策センター(CDC)とは比べものにならないレベルだ。

「CDCには常に新種のウイルスに備えた研究室と、安全に防護服を着用し検査に挑めるトレーニングを受けた研究者が、新型コロナウイルスの発生時のようにすぐに現地に飛べる体制ができている。日本にはその体制が整っておらず、医学部生にも、感染症ワクチン開発研究は不人気。マンパワーも足りないので、新型コロナワクチンの出遅れは当然の結果です」

Q:国内でできるとすればいつごろか?国産は安全なものができるのか

A:「アンジェスと阪大が研究しているのは、DNA(デオキシリボ核酸)ワクチンと呼ばれるもので、ワクチンを接種すると体内にウイルス表面のスパイク(無害なタンパク質)のみを発現させ抗体を作る仕組み。こちらも、mRNAと同じく、病原体を使わない点では安全ですが、効力はmRNAほど強くないと考えられています。それにこれから数万人規模の治験の必要があるので、実用化には数年かかるでしょう。塩野義製薬は、国立感染症研究所などと『遺伝子組み換えタンパクワクチン』の開発を進めています。これは、インフルエンザなどで実用化している手法で、体内で人間の免疫を引き出す『抗原』となるタンパク質を蚕の幼虫を使って作るワクチンです。ただし、大規模な治験はこれからで、新型コロナウイルスへの効果と安全性は未知数。これも、治験が終わるまで数年規模でかかるでしょう。そもそもファイザーなどのワクチンの接種が始まれば、数万規模の人がわざわざ今治験に参加するか疑問です。ワクチンが必要なのは今すぐであり、すでにmRNAも90%以上の予防効果が認められていますから、国産のワクチンを待つ必要はないでしょう。むしろ、日本は治療薬の開発に本腰を入れてもらいたい」

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