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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

心臓を守るために「乳製品」の摂取は効果的なのか

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 実際、いくつものメタ解析(複数の研究結果を統合して解析する統計手法)でも、乳製品の摂取と心臓病発症リスクとの間には関連性がないことが明らかになっています。さらには、乳製品を摂取する習慣は生活習慣病発症リスクと関連性がなく、むしろ予防になるというメタ解析の結果も複数報告されているのです。

 さらに近年は、低脂肪の牛乳、無糖や低糖のヨーグルト、塩分控えめのチーズなど、ナチュラルでより体に優しいタイプの乳製品が数多く登場しています。そうした商品の革新も、乳製品が健康に役立つというデータが明らかになってきた要因のひとつといえるでしょう。

 近年、世界各国で食品と健康の疫学調査が盛んに行われています。乳製品はもちろん、たとえば赤ワインなどに含まれるポリフェノール、ポリフェノールの一種でウコンなどに含まれる色素成分のクルクミンといった成分を積極的に摂取している人たちは、先進国に多い生活習慣病(高血圧、高血糖、高コレステロール)を遠ざけるような食習慣の実践となっていることが、さまざまな研究でわかってきています。

 それらの大規模調査による報告は信頼できるのは間違いないのですが、われわれはそうしたデータを妄信して“支配”されるのではなく、データをうまく利用して日頃の食生活に役立てる意識が必要です。たとえば、自分の体質を客観的に知るために採血などの検査をきちんと受けて、すでに抱えている生活習慣病やリスクを把握し、その管理と並行しながらデータをもとに食習慣を変えていく。今回の研究も、まずは自分の体の状態を確認したうえで、心臓病リスクを低下させるために問題のない範囲で意識して乳製品を摂取する、といった形で活用するといいでしょう。

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