(3)9カ月ぶりに会った母は記憶とはまったく違っていた

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「だったらお母さんに何か食べさせておいてよ!」と言う私に、父は近所のコンビニで買ってきたコッペパンを見せた。これを置いておいたけど、食べないんだよ、と。

 誰が食欲のないときに、飲み物もなしに味のないコッペパンを食べるというのだろう。父親の、生活感のない発想と行動に私は心底絶望した。

 さらに、母は風呂にも入っていないようだった。いつ着替えをしたのかもわからず、手足の爪は伸び放題。丈夫だった足は棒きれのように細くなり、かろうじて椅子に座っているものの、立ち上がることも歩くこともほとんどできなかった。

 これが、父親が電話で言っていた「僕の目から見ると何も変化がなくて、今まで通り元気だから何も問題はない」という母なのだろうか。

 あまりの変わりように衝撃を受ける私に、体を小刻みにブルブルとふるわせながら、母はささやくように小さな声で私に目も合わせずに言った。

あのね、私はコロナにかかってしまったから黒い服を着た人たちが家を取り囲んで監視されているのよ」

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