(1)母親との関係が解決のカギになる…専門家が解説
今のような支援策がなかった90年代初めから、多くの不登校の子どもたちのカウンセリングを行ってきた小野幸子・さち臨床心理研究所所長は、増え続ける不登校について、体験を踏まえこう解説します。
「不登校のきっかけはさまざまですが、背景、親子関係、特に母親との関係に触れなければならないケースが多くありました。そこにアプローチしないと、なかなか解決できません。そのため、子どもだけではなく母親、さらに父親への働きかけが効果的でした」
先の元教師の体験でも、親子関係が大きく影響しており、関係がいい生徒は、不登校になってもすぐに復帰できるようになるそうです。
令和6年3月に報告された「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」(子どもの発達科学研究所、浜松医科大学)によると、不登校の要因や背景は多岐にわたるが、主なものとして、体調不良や不安、うつ、朝起きられない、成績や学校の問題、いじめ、友人や教師との問題、親子関係などが挙げられています。
「うつや不安障害などの病気には薬などによる治療が必要ですが、並行して心理療法・カウンセリングなどを行うことが重要です。不登校は言葉では伝えられない、子どもの心の叫びの表れともいえます。それを親や大人が聞かないと根本的解決にはなりません」(小野所長)
これまで多くの不登校の子どもたちを救ってきた小野所長は、親も含めた心理療法(集団家族療法)が重要だと強調します。
次回からは、その具体例を紹介していきます。
(医療ジャーナリスト・油井香代子)