寝たきりになった男性はどのように人間力を回復したのか(2)
のみ込む練習を行っている間は、ずっと数人のスタッフがついてしっかり見守ってくれています。これまでの施設では、ここまで手間と人員をかけて、口から食べる能力を回復させるためのリハビリを行ってはくれませんでした。あらためて、この病院にお任せしよう。もしこれでダメだったとしても納得がいく──。そう思いました。
そんなのみ込む練習と並行して、廃用症候群で寝たきりの状態から全身を回復させるための「攻めのリハビリ」も実施していただきました。スタッフの介助の下、まずは体を起こして座らせ、立たせ、歩かせ、話しかけ……というトレーニングを地道に何度も繰り返していると、2週間後には自分で目を開けて、口を動かせるようになりました。さらに1カ月後には、こちらの呼びかけに正確に反応して、特殊な気切カニューレ(気管切開で開けた穴に挿入される空気の通り道を確保するための管)を使うと口から言葉が出るようになったのです。
そして、気管切開を閉じて口から呼吸することが可能になり、ついに食事を口からのみ込めるまで回復しました。意思の疎通もできて、少しずつ会話もできるようになりました。


















