著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

「最期の瞬間にいなくてもいい」という救い…訪問看護師の言葉

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 また、がんの末期や真皮を越える褥瘡など、こまめなケアが必要な患者さんに対して「特別指示書」が発行された場合には、1日に2回以上訪問したり、自宅に長く滞在して処置を行ったりすることもできます。特に不安を抱えたご家族にとっては、たいへん心強い存在です。

 そうしたご家族の中には、「最期の瞬間に立ち会えなかったら、本人が報われないのではないか」「家族としての責任が果たせないのではないか」「これまでのケアがむなしくなるのではないか」といった不安を抱く方も少なくありません。

 ある時、大腸がん末期で最期の時が近づいている86歳の男性患者さんのご自宅に同席した際、担当の訪問看護師がご家族にかけた言葉がとても印象に残っています。

「いつ呼吸が止まってもおかしくない状態です。ずっとそばについていなくても大丈夫ですよ。さっきまで話していても、洗濯物を取り込んでいる間に呼吸が止まってしまう、ということもありますから……」

 それは、息を詰めるようにして患者さんを見守るご家族の気持ちを、少しでも軽くするための言葉でした。療養生活が続く中で、ご家族にとってはすでに厳しい日常が続いています。その中で、突然訪れる看取りの瞬間。もしその場にいられなかったとしても、決して自分を責めないでほしい――。そんな思いで、ご家族の不安に寄り添った言葉でした。一見、遠慮のないようにも聞こえるその言葉ですが、その場にいた私たち医師も、感心すると同時に心が救われる思いがしました。

 これもひとえに、患者さんやご家族との距離が近い訪問看護師だからこそ持てる観察眼と気遣いのたまものでしょう。そうした看護師たちのさりげない心遣いもまた、在宅医療には欠かすことのできない大切な「医療アイテム」なのです。

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