戦時の健康(3)石油不足で医療体制も崩壊…なぜ戦時に感染症は増えるのか?
こうして、感染症が拡大する土壌が形成されるのだ。
■石油不足が招く医療用品の枯渇と冬季死亡増
「注意したいのは、この状況は空爆など直接の攻撃を受けない段階でも起こりうる点です。石油供給が止まれば、感染症リスクは一気に増大します」(永田氏)
戦前の日本がまさにそうだ。石油統制が段階的に行われ、1941年の米国の対日石油輸出全面停止による第三次石油消費規制では民間車両のガソリン使用禁止、灯油・軽油の購入切符制が導入された。その頃には公共交通機関は黒山の人だかり、霊柩車が動かず遺体はリヤカーで運ばれ、入浴さえ事欠くことになった。
「石油不足は医療用消耗品の枯渇も意味します。生産や輸送に石油が欠かせない手袋、チューブ、注射器などの供給不足や品質低下を招きました。当時は珍しかったX線フィルムも紙フィルムに代用されたのです」(永田氏)
石油はほぼ軍需専用となり、民間の灯油使用は消滅。暖房は木炭、薪などの代用燃料に依存したが、実際には輸送力の低下と軍需優先で石炭すら不足。住環境の劣化、寒さと栄養失調などにより、1944年から47年にかけて、高齢者や乳幼児を中心に冬季死亡が増加している。


















