山田ルイ53世さん「本は親に褒められると思い読んでいた」

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「ルネッサ~ンス! どうも貴族です」の挨拶で始まる漫才で、“一発屋”を経験した髭男爵の山田ルイ53世さん(43)。昨年は本を3冊出版し、そのうちの一冊、「一発屋芸人列伝」(新潮社)は、「第24回 編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。近著「一発屋芸人の不本意な日常」(朝日新聞出版)では、不本意や納得いかないことをつづっている。

  ◇  ◇  ◇

 本人は「中学時代から、特別に読書家だというわけでもありません」と言う。
「本を書いていると、記者の方はバックボーンを求めてきます。本をたくさん読んできたんですか? とか、何で書けるんですか? って。でも、読書しているから自分も本を書けるのかといえばそんなこともないと思いますし、基本的に読書をしているからと賢ぶったり、偉そうにしていることって、全く滑稽だなと思うんです。あれは、人がつくったモノをエンターテインメントとして消化しているだけの行為であって、そんな文化的に捉えますかねと……」
 とはいえ、実家の居間の本棚には、スタンダールの「赤と黒」とか、ドストエフスキーの「罪と罰」など世界の名作が並んでいて、“目を通していた”という。

■自宅では漫画禁止

「小学生の頃、公務員だった親父が“本を読んでいたら偉い”みたいな雰囲気出してきたんですよ。教育方針のつもりだったのでしょうが、5年生の時の誕生日プレゼントが、『子鹿物語』やったんですよ。元気盛りの男の子がもらって喜ぶ?と思いますけど、こっちも合わせてましたね。僕も親に褒められると思ってパフォーマンスで読んでいたんですね。江戸川乱歩の『少年探偵団シリーズ』や『ああ無情』『巌窟王』とかね。星新一さんの『ショートショート』は当時からいまだに読んでいます。自宅では漫画やアニメを禁止されていたから、系統が近いSFものには引かれましたね」
 この話にはオチがある。本棚に並んだ父親の蔵書は「拾ってきたもの」だったそうだ。
「数年前に本人から聞いて知りました。確かに開いているのも見たことないし、絶対読んでなかったと思います。名作を開いた時、脂取り紙みたいな紙質で、ペリペリペリとなってましたから。ただ、今考えると江戸川乱歩などは、親父自身が、子どもの頃に読んでいた本で、それを僕に薦めてきたんだと思うんですよね。これが僕の読書体験で、自分が文章を書く時の言葉であったり、言い回しとか、部品を仕入れる先としては意味があったかもしれません」

■「紋切型社会」は最初の10ページで閉じてしまった

 一方、漫画を禁止されたリバウンドで、自分の娘には漫画を読ませている。山田さんは、難関私立中学校受験に成功したが、引きこもりに。ただ、テレビも見ない家庭だったため、図書館通いはしていた。
「当時、見えで、量子力学の基礎本を借りて読んでいました。そのおかげで『一発屋芸人列伝』を書いた時に、諸現象を観察し、宇宙のすべてがつながっているという“量子力学例え”ができて、結構それを褒めてくれる人がいてそれはよかった。SFとつながるのか、物理や化学は好きだったんです」
 今は好きな作品を読んでいる。唯一、最初の10ページ以降、開けないでいるのは、武田砂鉄さんの「紋切型社会」(朝日出版社)。社会を著者の視点で自由に批評している一冊だ。
「ラジオやっている時に作家さんに薦められたんです。モノを書くような仕事を頂き始めた頃で、本を開いてすぐにヤバいと思って途中で閉じたんです。あまりにも言葉、文章のパンチが強過ぎて絶対影響を受けてしまう。そんな恥ずかしいことはないと思って、その本をもらったのは何年も前ですが、いまだに怖くて読んでません。読まなくてたまたま似るのは仕方ないですが、読んでしまったらパクリですからね」
 本人が中学時代から本を読んでこなかったというのは独特の照れ隠しだろうが、オリジナルな文章を書いてみたいという挑戦的な意味があるのかもしれない。

(取材・文=小野真依子/日刊ゲンダイ)

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