テレワーク社員に必要な能力と課題は 導入5年の企業に聞く

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 悪いことばかりではないだろう。新型コロナショックで、テレワークが少しずつ進んでいる。このままの流れだと、もっと定着するはず。

 では、テレワークを導入すると、何が変わるのか。戸惑いはないか。「テレワークスタートガイド」を公開したレノボ・ジャパン広報部長・鈴木正義氏に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

「テレワークを導入・定着させ、生産性をアップするために3つのキーワードがあります。それが、『ツール』『制度』『文化』です」

 キーワードごとに見ていこう。

ツール テレワークは、仕事場所を選ばない働き方だ。PCは、持ち運びを考え、ノート型がベター。PCでのテレビ会議システムに適したアプリやツールを導入してオンライン会議を効率化する。

制度 テレワークをするのに上司に事前申請は必要か。就業は何時から何時までか。仕事の始めと終わりに上司への事務報告は必要か。そういった就業規則的なルールを決めておく。

文化 上司としてはテレワークで部下がサボっていないか気になる。部下としては、上司が正当に評価してくれるか不安だろう。それぞれの不安を取り除き、テレワークで前向きに仕事に取り組め、通勤時間を省くなどメリットも多い――という認識を共有する。

 そうはいってもスムーズに導入できたわけではなかったという。

「『部下の顔色を見ながら、時には、げきを飛ばしたい』『仕事ぶりを見ながら進捗状況を知りたい』というベテラン社員は少なくありませんでした。若手は若手で、『上司が会社にいるのに、テレワークしていると落ち着かない』『そもそもテレワークしたいと言いにくい』という意見も多かった。2011年の東日本大震災以来、テレワークの導入を探っていて、本格的に進んだのが、2015年です」

 先進的なイメージのPCメーカーも、環境整備に4年をかけている。

「その年から回数制限を設けない形でテレワークをスタートしました。3月11日当日と前後の日は『一斉テレワークデー』に設定。全社員が出社せずにテレワーク勤務としています。今年も3月11日に実施し、滞りなく業務を進めました」

テレビ会議で重要なのは「顔」より「音声」

 導入当初、テレビ会議をめぐり、「自宅の中を見られたくない」「リラックスしている姿は見せたくない」といった声が上がったという。

「テレビ会議に必要なのは姿ではなく、あくまで音声です。顔だけ映るようにする配置で解決。もうひとつは、テレビ会議に参加するメンバーの空間認識が違うので、『あっち』『こっち』『それ』などの指示代名詞は使わないように注意することを決めています」

 さらに5年の経験を積んだ今、新型コロナ騒動が勃発。全社員に「可能な限りテレワーク」という指示が出たそうだ。

「この騒動で、取引先からも『テレビ会議で打ち合わせをしたい』という要望を受けるようになりました。以前は、『打ち合わせは対面じゃないと先方に失礼』『実際に会わないと円滑なコミュニケーションが図れない』という懸念を持たれることが多かったと思いますが、社会の意識も急速に変わっています。テレワークのメリットが社会的に合意されつつあるのでしょう」

 もちろん、デメリットもある。酔っぱらってノートPCを紛失したり、喫茶店などでの仕事中に背後から盗み見されたり……。

「最も注意すべきは情報漏洩です。セキュリティー確保は大きな課題。これはリアルの仕事でも共通することですが、テレワークはリアル以上に自己管理能力が大切です」 テレワークをしていないと、“出社してオフィスにいるだけで仕事した”という錯覚に陥ることがあるが、テレワークが定着すると、そんなことがなくなる。

「成果を出すことが仕事という意識になるため、仕事の成果が今まで以上にシビアに判断されるのです」

 場所を問わず、仕事は前向きに取り組む時代ということだ。

導入の壁は評価制度の見直し

■実施中は6人に1人

 リクルート住まいカンパニーが先月25日に発表した「テレワーク×住まいの意識・実態」調査結果によれば、「実施中」は17%。まだ6人に1人程度で少ない。接客業や店舗スタッフなどテレワークが不可能な仕事はともかく、事務系の仕事なら会社の規模に関係なく環境さえ整えば、理論上はできるはずだ。何がテレワークの壁なのか。働き方改革総研の新田龍氏に聞いた。

  ◇  ◇  ◇

「テレワークを嫌う管理職は、労務管理のしにくさを強調しますが、アプリを使えば、世界中どこからでも通話できるし、グループチャットができます。チャットをビデオ会議に切り替えることも可能。労務管理のしにくさは、テレワークの決裁権を持つ管理職のITスキルが弱いがゆえの誤解です」

 リアルに机を並べて仕事をしていても、サボる人はこっそりスマホをいじったりしてサボる。出社していれば、一体感があるかというと、そうでもないだろう。そこを踏まえると、一番の壁は評価制度の見直しだ。

「出社を前提とした働き方では、『最終成果』より『普段の働きぶり』が重要な要素を占めます。そんな評価制度のままテレワークを導入すると、数字が明確な営業などの部署以外は、正しく評価できません。つまり、テレワークを確実に導入するには、部内にある仕事をすべて洗い出し、それぞれの貢献度や難易度などを数値化。社員の仕事について『何をどこまでやったら、これだけの成果』という基準を明確化するのです」

 不要な作業や会議はこれを機にスパッとやめ、システム化できることはシステム化する。そうやって仕事の進め方と評価制度を見直した上で、スタートすればいいのだ。

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