麹は焼酎造りの“縁の下の力持ち”
麹の力――その恩恵を酒から受けている人は多いはずだ。麹は日本酒だと米、焼酎だと米・麦・サツマイモなどの主原料のでんぷん質を糖分に変え、酵母がそれを発酵させアルコールに変えるためのアシスト役を担う。
日本酒では主に黄麹、焼酎では黒麹・白麹という麹菌を使うが、実は大正時代の初め頃までは、焼酎も黄麹を使っていた。しかし暑さでよく腐敗したため、より暑い沖縄の泡盛に使われていた黒麹を純粋分離し、焼酎用に用いることに成功したのが、初代河内源一郎。本連載の主人公・山元正博の祖父である。
「祖父、源一郎が発見した黒麹による焼酎造りは、またたく間に南九州全土に広がりました。さらに黒麹よりクセのない仕上がりになる白麹も発見。どちらも今の焼酎に使われている麹菌です」
山元の父親である山元正明(2代目河内源一郎。源一郎の娘婿のため姓は山元)もまた焼酎のために生涯を捧げた。発明した「河内式自動製麹装置」は、それまで各酒蔵で手作業により行われていた洗米・蒸米・種混ぜ・製麹をすべて自動で行うことで、低コストで安定した味の焼酎を造ることを可能にし、九州の焼酎を全国区の酒へと飛躍させた。
「さらに父は得意先の各蔵に足を運びアドバイスを行うなど、品質向上のための労を惜しみませんでした。私も若い時は父と一緒に回り、サポートしたものです」