外出禁止令違反で“罰金55万円” 商品棚から手芸品も消えた

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失業補償終了2週間後に感染者数記録更新

 ハワイ州全土で外出禁止令(Saty At Home Order)が始まった2020年3月25日、そして翌26日0時1秒からすべての旅行者と同州の居住者に14日間の自己隔離が開始され、半年になります。

 この間、3歩進んで2歩下がりの水前寺清子スピリットで行きつ戻りつ、薄氷の上を抜き足差し足、石橋を叩きまくって金槌が折れて新たに発注したり、発注した金槌が多すぎて批判されたり……新型コロナウイルス感染症に関してどこにも正解がないなか、脳みそに汗をかきながらハワイ州は歩んできました。ですが去る8月13日、1日の感染者数としては今現在最高となる、355人を記録してしまいました。

 その内訳として、太平洋諸島出身者の感染率が他の人種や全体の人口と比較して群を抜いているという報告もありますが、私は7月31日に連邦パンデミック失業補償(Federal Pandemic Unemployment Compensation:FPUC)が終わったことも一因なのではないかと思っています。なぜなら1日の最高感染者数を記録した8月13日は、ちょうど7月31日の2週間後でもあったからです。

 潜伏期間にはバラつき(1~16日)がある上、統計を語る際の単純計算はご法度ですが、それは後述するとして、8月13日にハワイ最大の感染者数を記録して1カ月近く後の9月7日(同8日の新規感染者66名)まで、毎日の新規感染者数が3桁というハワイ未曾有の数値を記録し続けたこと、感染拡大率が全米1位になったこと、そして2度目のロックダウンの渦中にあった今、ハワイ島在住者としてこのハワイにおける七転八倒の戦いを書き残しておかねばという焦燥感にかられ、オデュッセイア並みの一大叙事詩を粘着質に解き明かしていきたいと思います。

■3月まで感染者ゼロの“カラクリ”

 まず、感染者の報告がまだされていなかった2020年3月5日、デービッド・イゲ州知事が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する非常事態宣言を発表しました。翌日になってハワイ州初の新型コロナウイルス感染者が報告されますが、その方はサンフランシスコとメキシコを往復するグランド・プリンセス号に乗っている間に感染したとのこと。

 それまでは感染者ゼロとされているハワイ州、2月にはマウイ島とオアフ島に滞在(1月28日~2月7日)した日本からの渡航者が帰国後に陽性と発表されたりはしていたのですが、それでもハワイが3月まで感染者ゼロであった内幕は、そもそも2月はハワイ州に正常な検査キットが届かず検査ができなかったためといわれています。

 その頃はマスクをする人はほとんどおらず、来布していたわたしの父がマスクをして臨月の私の付き添いで病院に行った際、受付で「なぜマスクをしているのか、中国から来たのか」という詰問を20分くらい受けるという場面もありました。まだ世界でもコロナウイルスがアジア人のものという意識が強い人も多かった頃です。父は「Everybody has to put a mask in Japan.」と抗弁していましたが、帰り道で「マスク、もうしないもん」とつぶやきました。かわいそう。

■手芸・工作用品まで品切れ

 ともかく、その後ハワイに帰ってきた在住者の陽性がポツポツと報告され始め、この頃よりイベントやマラソンが中止、もしくは延期され始めました。私の住むハワイ島が誇る世界最大のフラの祭典、メリーモナーク・フェスティバル(4月12~18日)が中止となったのは大変な驚きでしたが、かえって一大事であるという認識がハワイ島に広がり、備蓄(という名の買い占め)が起こりました。やはりトイレットペーパーはどこでも在庫ゼロでしたが、なかなか入荷されることのない手芸・工作用品も、暇を持て余す子供のためか、軒並み売り切れでした。

 そして3月16日に市中感染とみられる陽性患者(合わせて10名)が出たことにより同19日、ホノルル市のカーク・コールドウェル市長が市内のバー、クラブ、レストランを閉鎖し、テークアウト、ドライブスルー、デリバリーのみの営業に限定すると発表。その翌々日である21日、デービッド・イゲ州知事は太平洋横断旅客とハワイ州に戻る居住者に、14日間の自己隔離措置を26日深夜0時1秒から実施する緊急宣言を発表しました。

 22日にはコールドウェル市長がオアフ島内での外出禁止令を発令、23日にイゲ州知事も、25日から4月30日までハワイ州全体における外出禁止令を発令しました。このようにロックダウン、自己隔離措置、外出禁止令と内外的に三つ巴を画した封じ込めは、これぞ政(まつりごと)とでもいうべき迅速で華麗な対応でした。

 自己隔離の義務は、アメリカ合衆国内における初めての措置であり、海外だけでなく米国本土からハワイへ到着するすべての方に適用され、この時点でハワイ旅行は実質的に不可能となりました。そして4月1日、イゲ知事はハワイ島からオアフ島など島内間の移動をする旅行者や在住者に対しても、2週間の自己隔離を義務づけると発表しました。3月26日の太平洋横断旅客に続き、全旅行客に拡大した14日間の自己隔離ですが、この長く辛きに渡る隔離政策がいまのいままで続くとは、あのとき誰が予想したでしょうか。

 私事になりますが、産んで半年の乳飲み子が未だに家族の誰とも会っていないという事実を目の当たりにするたびに、異常事態なんだと思い知らされます。

心電図のようなトランプ大統領のサイン

 一方、トランプ大統領は3月27日、2兆9000億ドル(約305兆円)に上る米国史上最大規模の救済措置である救済法案「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security)法<CARES法>」に署名しました。これは民間企業支援や失業保険の拡充(各州から給付される失業保険に加え、週600ドルの補填が7月31日まで受けられるというもの)、年収7万5000ドル以下、人の納税者への現金給付(成人に1200ドル、未成人:17歳以下に500ドル)などが盛り込まれました。個人で年収が9万9000ドル、夫婦で19万8000ドル(世帯主の場合は、年収が14万6500ドル)を超えると給付対象外となりますが、もちろん我が家庭にも全力で給付していただきました。

 心電図のようなトランプ大統領のサインが入った、給付するのでありがたく受け取るようにという手紙、もしくは口座情報がない場合には小切手が郵送されたのですが、こちらもトランプ大統領らしい逸話が……。通常は任命職公務員が署名するところ、小切手に自分の名前を入れたいと内国歳入庁にゴリ押しをして、小切手にあるメモ欄の「経済的衝撃にともなう支給」という言葉のもとにトランプ氏の署名が入ることになりました(2001年にブッシュ元大統領も国民に配る小切手にメッセージを入れようとしたが叶わなかったという、歴代のアレな大統領の悲願の模様)。

 その作業で送付が遅れたという珍事ですが、トランプ大統領は、I'm sure people will be very happy to get a big, fat, beautiful check and my name is on it.(素晴らしく贅沢な大金、しかも私の名前が署名された小切手を受け取って人々は幸せだろう)と満足げ。さすがどんなときでも、丁寧に細かく笑いを差し込んくる大統領ですね。

■外出禁止令発令2日後に経済支援

 ハワイで外出禁止令が出された2日後に、コロナ対策の経済支援がすぐに始まったので市井の人々は申請と備蓄などで忙しく、3月31日に初の死者が報告されたものの、比較的穏やかな状況でした。それよりも外出禁止令を甘くみていた人々が、続々と罰金をくらう羽目になっておりました。前代未聞の外出禁止令、なわけですよね。そもそも行動の自由というものは、基本的人権だと思っているわけじゃないですか、通常は。俺が生きようが死のうが誰にも関係ない、みたいな中二病の特権みたいな思考がいまはもはや許されないわけです。

 無症状でも感染していた場合に、自分の、もしくは誰かの大事な人を殺してしまうかもしれないという加害者意識を持って行動しなくてはいけないのです。わたしも中二病の特権だと思っていた黒マスクを、ナチュラルに装着する日が来るとは思ってもおりませんでした。当初は「外出禁止令つってもねぇ。うちら大丈び」みたいな感じの方々が、即座に容赦なく捕まり罰金300ドルを払わされておりました。

■外出禁止令違反者は“罰金55万円”

 この外出禁止令は、違反者に5000ドル(約55万円)以下の罰金または1年以下の禁固刑、または両方が科されるという厳しいオーダーなのですが、4月1日の時点でホノルル市警のスーザン・バラード本部長は1500件の警告、180件の罰金、9件の逮捕を発表しています。違反者や取り締まり警告を受ける人が後を絶たないため、同7日に強化されましたが、発令されてから10日ほどで警告は4660人に達し、353人に違反切符が発行され、その後70人の逮捕者が出ました。

 違反切符や逮捕に繋がった違反行為の大半は、警官の命令に従わず公園などの立入禁止区域から退去しなかったためと前述のバラード本部長は説明。通常は小さくサイレンを鳴らしながらパトカーで近づくと皆ソーシャル・ディスタンスを取るか、素直に散るのですが、それでもお互い離れずにちょっとチャットを止めない、口頭で警告しているにもかかわらず公園から出て行かない場合、もしくはとにかく舐めた態度でいると、すぐに切符が切られる、ということです。

 しかも公園がダメならと、スーパーで友達と一緒に買い出しをしていた方々もアウト、さらには5000ドルという血も涙もない最大金額の罰金をくらった方も……。それが友達をピックアップしドライブがてら買い出しに行く途中でパトカーに止められた方で、<一緒に住んでない人>と、<密室という車の中>で<ソーシャルディスタンスを守っていない>ということに加え、<外出禁止令の根幹である不要不急の“ドライブ”>、さらに<何度も警告を受けていた>ということも加わったからだそう。当初ここまでオアフ島でかなり厳しく取り締まりをしていたのは、SNSで拡散させる目論見もあったとか、なかったとか……。

 こうして始まったハワイの七転八倒、中編に続きます。

▽鮓谷裕美子(すしたに・ゆみこ) ハワイ島在住の編集者・ライター。上智大学英文学科を卒業後、「NIKITA」(主婦と生活社)、「東京カレンダー」を渡り歩き、食べログマガジン編集長として立ち上げから関わる。守備範囲は西洋・東洋古典文学から食とエロスまで。

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