<12>誕生から20年余…都立霊園利用者の半数に迫る「自動搬送式納骨堂」
首都圏の駅構内や電車の中で、「〇〇駅から徒歩△分」「手ぶらでお墓参りができる」といった広告をよく見かけるようになった。「自動搬送式」の納骨堂だ。
「従来のお墓のイメージとはかけ離れていて、パンフレットを見た時は『嫌だ』と思いました。ところが、妻に引っ張られて見に来て、気が変わったんです」
こう話すのは、東京都内の自動搬送式納骨堂を2年前に一式80万円で購入した北村康さん(65=仮名、世田谷区)。
高級マンションやホテルを思わせる建物が多く、立体駐車場と倉庫を組み合わせたような仕組みだ。パネルにICカードをかざすと、コンピューター制御の保管庫から骨壷入りの箱が参拝ブースに運ばれ、共用の墓石にセットされる。
北村さんは鳥取県出身。県内の墓地に実家の墓があったが、東京暮らしが長く、鳥取に戻る予定はない。父と母の七回忌を終えた後に「墓じまい」し、遺骨を納骨堂に移転させたのだった。
遺骨移転の受け入れ先は霊園、寺の境内墓地、樹木葬など各種ある中、妻が「利便性」「美しさ」を理由に自動搬送式納骨堂を断固推した。「土の上に立つお墓」にこだわろうとした北村さんだが、「通常のお墓の約半額」は魅力だった。寺の経営とはいえ、販売も管理運営も別会社。「倒産する可能性も?」とよぎった不安は、「そうなった時のこと」と割り切れたという。