森下の「魚三酒場」でサックリふわふわのアナゴ天で升酒をグイ!

公開日: 更新日:

粗塩をなめなめ、升酒を

 中から店のお姉さんが出てきて、暖簾を掛けると、同時に先輩たちがなだれ込んだ。アタシも負けじと付いていく。コの字カウンターが2列。アタシは内側の先端に陣取る。エプロン姿のお姉さんたちが大忙しで動いている。まずは生ビール小(550円)とマグロの赤身(480円)。

「ちゃっちゃと注文してくれると助かるわ。メニューを見上げて、いつまでも悩んでいるお客が一番困るのよ!」

 リーダー格のお姉さんはきっと、この辺の下町娘だろう。せっかちが顔に表れている。思わず苦笑するアタシ。気が付くとほぼ満席。壁の短冊にはうまそうなつまみがズラリ。短冊があってもないものもあるようだ。

「だから今日はキスは入ってないの!」

 何度言えばわかるのよ、ってな感じで隣のカップルをさばいたお姉さんがアタシの前に来て、

「今日はアナゴが入っているから、アナゴのてんぷらがいいよ」

「じゃ、アナゴ天(550円)。それと升酒(450円)チョーダイ」

 こういう店ではお姉さんたちに逆らわないことが肝心。素直に従っておけば、まず間違いない。それはともかくここの赤身のすごいことと言ったら……さすが看板メニュー。銀座だったら3倍取られるよ。

 ほどなく平皿にのせた升と樽酒の入った片口を持ってお姉さんがやってきた。ドボドボドボ。受け皿からもあふれるほどついでくれ、しかも粗塩まで用意してくれた。

 粗塩をなめなめ、升酒をくい~。たまりませんなあ。そこへアナゴのてんぷらがやってきた。サックリふわふわをほおばり、塩をなめて酒をグイ! それを見ていたくだんのお姉さん、「うまいでしょ!?」。「もう、死んでもいいよ」「ガハハハッ」。

 そんなこんなで1時間。お勘定を済ませると、お姉さんはきちんと頭を下げ、「またおいでください」。下町女はけじめに厳しい。丁寧にあいさつされたアタシは上機嫌で店を出たのでした。(藤井優)

○魚三酒場常盤店 江東区常盤2-10-7 常盤魚三ビル

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー