新潟県十日町市の“限界集落”に移住したドイツ人建築デザイナーが起こした奇跡
モダンで堂々としたたたずまい
日刊ゲンダイ記者が竹所を訪れたのは、4月の平日の昼下がり。集落を散策すると、黄色や赤茶、ミントグリーンといった色とりどりの邸宅が点在し、山あいの風景に鮮やかな彩りを添えている。古民家とは思えぬ、モダンで堂々としたたたずまいだ。
住民は仕事に出ているのか、生活音は聞こえず、ホトトギスの鳴き声だけが響いていた。澄んだ空気を吸いながらただ歩いているだけで、都会で荒んだ心が満たされていく。つい、ここに住めたらとスローライフに思いを馳せた。
そこへ、徐行する車がやってきた。声をかけると……。
「長野県から観光で来ました。最近、テレビで取り上げられていて。どんなものか見てみようと」
再生古民家を活用した竹所唯一の商業施設で人気のカフェ「イエローハウス」は、平日は営業していない。にもかかわらず観光客が訪れるのだから、この集落の持つ吸引力には改めて驚かされた。住民のひとり(性別・年齢非公表希望)に話を聞けた。
「ここは豪雪地帯だけど、除雪サービスが完璧に行き届いているから、真冬でも車を動かせます。カールさんが建てた家は温かみがあり、暖炉とエアコンでポカポカです。どれだけ雪が積もっても家がきしむこともない。夏は涼しいし、とっても快適に暮らしています」