新潟県十日町市の“限界集落”に移住したドイツ人建築デザイナーが起こした奇跡
雄大な自然のとりこに
さて、ベンクス氏といざ対面。聞けば初来日は26歳の時だそう。12歳から空手を習っており、「より強くなるために」と、日大に留学したのが始まりだ。当時は映画のエキストラや大阪万博(70年)の建設などに携わり、7年ほど過ごした後にドイツへ帰国。現地で本格的に建築デザインを学び、その後は日本の古民家を欧州に移築する事業を起こした。
「初めて竹所に来た92年も、向こうに持っていく古民家を探すためでした。でも、竹所の雄大な自然のトリコになってしまって。ここに住もう、と。即決で家を買ったんです。妻は最初こそ反対していましたが、実際にこの地を見た途端、すっかり心変わりしてくれました(笑)」(ベンクス氏)
2年かけて改築したかやぶき屋根の自宅は「双鶴庵」と名付け、日本に完全移住。「カールベンクスアンドアソシエイト有限会社」を立ち上げ、これまで竹所や松代(竹所の隣町)を含む日本全国で約70棟の古民家を再生させてきた。
「私が移住した当初より、交通面ははるかに便利になりましたが、特に松代は高齢化や過疎化で元気がなくなっています。竹所のようにもっともっと人を増やしたい。子供の声、笑い声が響く町にしたい。そのためにも私は、人を引きつける家を建て続けます。妻と最期を迎えるまでここで暮らし、お墓もこっちにすると決めていますから」(同)
竹所から始まった再生の物語は続いていく。
(杉田帆崇/日刊ゲンダイ)