発情したメスのワンちゃん排卵日を特定する「スメア検査」ができない理由
■「適正飼育、終生飼育」
時代が進んで現在は、動物愛護管理法が施行され、厳格に運用されるようになっています。そこで掲げられているのは、「適正飼育、終生飼育」で、飼い主さんがむやみにペットを増やすことを避ける流れです。
一方、獣医師は適正飼育についてきちんと飼い主さんを指導することが義務づけられていますから、一般家庭でペットを増やすことにつながるスメア検査を推奨することはできかねます。この検査を行えるのは、第1種動物取扱業の登録で「販売」に該当するブリーダーさんや小売業者などです。
今回の方には、そうした背景をしっかりと説明し、納得していただきました。その相談者は、動物愛護管理法が制定されるかなり前に実家でワンちゃんのお産を経験されたことがあり、その感覚が残っていたこともあるようです。
交配してからの対応も重要でしょう。無事に受胎しても、小型犬の種類によっては、成長して胎児が大きくなると、帝王切開も選択肢に入ってきます。残念ながら、現在のスタッフには、帝王切開の経験者がおらず、万が一の場合、安全に帝王切開を完遂できるかどうか責任を負えないという事情もあります。
受胎を確認し、将来生まれてくるワンちゃんすべての適正飼育と終生飼育の確約を頂いたとしても、こうした事情も重なって、一般の方ではスメア検査をお受けできないのです。この点についても納得していただきました。
(カーター動物病院・片岡重明院長)